若いんだからしょうがない

奴からの挑戦状
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「悪ぃな・・・・」
そんな馬鹿みたいに正直な言葉を口にすると、目の前にいる彼女の顔が曇って、
無理矢理作ったんだと分かるくらい、そんな笑顔で「ありがとう」と言い、
俺の前から逃げるように去っていった。
あぁ、なんでこう・・・・。
今まで同じクラスにもなったことがないし、今日初めて顔を知った奴になんで
こんなにも罪悪感を抱えなければならないのか・・・。
だからと言って、付き合いを承諾するわけにもいかなかった。
じゃあ、そうすればお互いが傷つかずに丸く治められるのか・・・。
きっとそんなことはないのだろう。でも、ここで一言「いいよ」って言ってあげれば、
俺の中でも何かが変われたのかも・・・しれない。


「モテてるねぇ、色男さん。」


「・・・っ、てめ・・・」
「あれ?ご機嫌ナナメですか?」
人気の無い、目立たない場所を選んでくれたろうに、こいつは全く・・・・。
体育館の裏にある、非常階段のてっぺんの壁から顔を出した白髪野郎、
坂田銀時は本当に嫌味な笑顔を向けてきた。
って言うか・・・いつからいたのかマジ、わからねぇ・・・・。
「盗み見たぁ、随分な趣味じゃねぇか」
「てめぇらが勝手にそこでおっぱじめたんだろ?」
体育館裏なんてベタなんだよ・・。奴はそう言うと、頭を引っ込めた。
降りてくる気配が無いので、ほっとこうと思ったが、相手のこともあるので、
話をつけて置かねばと、奴の元へと階段を上る。
「告白してる所じゃなくてよかったよね。多串くん。」
奴に近づくと、悪びれた風もなく、そんな言葉が投げつけられた。
「てめぇ、今あった事・・・・」
「言わないでって?」
一瞬、奴の笑みに気持ち悪さを感じた。こいつはたまにこんな顔をする。
何を考えてんだかまったくわからない・・・。わかろうとも思ったことはないが、
気味が悪いのでやめてほしい。
「お前・・・・」
「言わねぇよ・・・意味ねぇことはしねぇって・・・。」
「そうか・・・」
それを聞いて安心すると、優しいのねと、奴が悪戯に笑む。

それにすさまじく腹が立ったので、座っている奴のわき腹を蹴飛ばしてやる。
いてぇな・・・と文句を言ってくるのをしかとして、隣に座る。
「座って良いなんて、言ってねぇぞ。」
「許可が必要だなんて聞いてねぇからな。」
「あぁ・・・可愛くねぇ。」
「おめぇに可愛いって言われたくねぇもんよ。」
「違いねぇ。」
ははっと奴が笑顔を見せると、ふと甘い香りが鼻をくすぐる。
「また甘いもん食ってんのか。」
「飴だよ。」
「虫歯だらけなんじゃねぇの?」
「俺、歯は丈夫なの。」
奴が、にっと歯を見せると、確かに真っ白な歯が姿を表す。
「多串くんは、ヤニ臭くならないように気をつけてね。」
「土方だって言ってんだろ。うるせぇな・・・。」
生徒会長と真面目が売りで学校生活を送っている俺としては最大の欠点。
まぁ、生徒会とか関係なく学生で煙草はまずいのだが・・・。
こいつだけ、俺の喫煙を知っていた。
なんかむしゃくしゃしたとき、つい屋上で一服してしまったとき、こいつが居たのだ。
次の日にゃあバラされて停学くらいくらうだろうと思っていたが、
何も起こらず、拍子抜けした記憶がある。
奴が誰にも喋らなかったのだ。

「おい、おめぇ飴持ってねぇ?」
「あ?」
「さっき吸っちまったんだよ・・・匂い消しだ。」
とんだ中毒者だよ。そう言って奴は自分のズボンのポケットをゴソゴソと探す。
「あ、ねぇや、コレで最後。」
そう言って、自分の口の中の最後の飴を見せる。
「使えねぇな。」
「自分でガムぐらい持ってろよ。」
奴は眉を寄せると、俺の座ってる反対側から、ヘッドホンを取りだし、首にかけた。
本当は規則違反。没収なのだが、最近の学校は乱れる一方。
教師もその辺は諦めているらしく、生徒はやりたい放題になっていた。
なので、学校の秩序を守る生徒会としてはとても楽になった校則をありがたく思う。

「ドコいくんだよ。」
「休み時間終わるから移動すんの。」
「授業出んのか・・・。珍しいな。」
「違ぇよ。うちのクラス次体育だろ?」
「あぁ、そうだったな。」
ってことは、同じクラスの俺も体育ってことか。
忘れてた、めんどくせぇな。
さぼってやりてぇが、いつもの授業に真面目に出すぎた所為で、
居ないことがとても目立ち、探されてしまう。
こいつみたく適度に参加していればよかった・・・。
この白髪はたまにしか授業に参加しないくせに、存在感はぴか一だった。
容姿の所為もあるが、なにかが人を引きつけるらしい。
干渉されるのが嫌で、孤独を好むくせに、たまの行事で誰よりも目立つ存在。
全くもって、不思議な人間だった。
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