赤い月夜が僕等を嗤う

□赤い月夜が僕等を嗤う 10―Painful
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「嘘だ・・・・ユタが、殺した、なんて。」





途切れ途切れのその言葉。
それでも、言葉を紡がなければ、自分は保てない気がした。

カウェンは何も言わない。弱弱しく口元に笑みを浮かべながら、ただ私を見つめていた。
この人がユタを殺した、などと思えないほどに、哀しげな笑みで。





「嘘・・・でしょ?ねぇ・・・・・・」





カウェンは一瞬躊躇した様な表情をしたけれど、私の言葉に答えようと口を開く。
それは肯定でも、否定でもなかった。





「お前が、俺の言葉を信じないというのは、予想はついていた。」





困った様に表情を歪めながらも、カウェンは言葉を続ける。
「それでも・・・・・お前を、あのままにはしておけない、と思ったんだ。」と。





「どうして・・・?」





カウェンは嘘をついている様には、見えなかった。
でも信じられない。心が拒絶している、から。

私が信じないと知っていながらも、それを訴え続けて。





「俺と同じ、痛みを感じて欲しくなかった・・・からかな。」





カウェンの言葉は、深く私の胸に突き刺さる様に、響いた。
物悲しく切ないけれど、言葉を紡ぐのを、彼はやめない。





「俺と同じ、痛み・・・って?」





カウェンの言葉を、繰り返す様に聞き返す。
「そのままの意味だよ。」と、答えにもならない答えが返ってきた。

はぐらかす様な、答え。



私が行き場のないもどかしさを、感じているのを気づいたのか、カウェンはこちらを向いた。
少し上を向きながら苦笑して、「知りたいのか?」と尋ねた。

私は無言で頷いた。





「人から、裏切られる痛み・・・・そして、全てを無くした、痛み。」





その言葉はつまり、カウェンがそれを経験した事がある、という事だ。
人から裏切られ、そして全てを無くし。





「これを、見た事があるだろう?」
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