赤い月夜が僕等を嗤う
□赤い月夜が僕等を嗤う 10―Painful
1ページ/4ページ
「嘘だ・・・・ユタが、殺した、なんて。」
途切れ途切れのその言葉。
それでも、言葉を紡がなければ、自分は保てない気がした。
カウェンは何も言わない。弱弱しく口元に笑みを浮かべながら、ただ私を見つめていた。
この人がユタを殺した、などと思えないほどに、哀しげな笑みで。
「嘘・・・でしょ?ねぇ・・・・・・」
カウェンは一瞬躊躇した様な表情をしたけれど、私の言葉に答えようと口を開く。
それは肯定でも、否定でもなかった。
「お前が、俺の言葉を信じないというのは、予想はついていた。」
困った様に表情を歪めながらも、カウェンは言葉を続ける。
「それでも・・・・・お前を、あのままにはしておけない、と思ったんだ。」と。
「どうして・・・?」
カウェンは嘘をついている様には、見えなかった。
でも信じられない。心が拒絶している、から。
私が信じないと知っていながらも、それを訴え続けて。
「俺と同じ、痛みを感じて欲しくなかった・・・からかな。」
カウェンの言葉は、深く私の胸に突き刺さる様に、響いた。
物悲しく切ないけれど、言葉を紡ぐのを、彼はやめない。
「俺と同じ、痛み・・・って?」
カウェンの言葉を、繰り返す様に聞き返す。
「そのままの意味だよ。」と、答えにもならない答えが返ってきた。
はぐらかす様な、答え。
私が行き場のないもどかしさを、感じているのを気づいたのか、カウェンはこちらを向いた。
少し上を向きながら苦笑して、「知りたいのか?」と尋ねた。
私は無言で頷いた。
「人から、裏切られる痛み・・・・そして、全てを無くした、痛み。」
その言葉はつまり、カウェンがそれを経験した事がある、という事だ。
人から裏切られ、そして全てを無くし。
「これを、見た事があるだろう?」