赤い月夜が僕等を嗤う
□赤い月夜が僕等を嗤う 07―Ultimatum
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頭がその事実を拒否してる。
ユタが、死んだという事実を。
「何で・・・・何でころしたの!」
それは一瞬だったのかもしれないし、永遠だったのかもしれない。
ただそれだけを尋ねるだけに、脳を整理する為の時間。
「・・・・・・・・・・・・・ユタが、アイツの召使だからだ」
答えなんて期待していなかった。
まさか答えるなどと、思ってはいなかったから。
目の前の男の右耳につけられた、赤いピアスが揺れる。
そのピアスに何故か、見覚えがあった。どこで見たのかは思い出す事は出来なかった。
「ア・・・イツ?」
男が口にした言葉をもう一度、口の中で繰り返す様に呟いた。
男は返事をしなかった。何か口にしようとした時、廊下が騒がしくなったのが聞こえた。
この騒ぎを聞きつけて、大臣や家臣が来たのだろう。
「・・・リディア。」
切羽詰った様に、男が私の名を呼んだ。
何故、私の名前を知ってるのかなんて、尋ねる暇さえなかった。
「俺が、憎いか?」
そう尋ねた男の、瞳に映る私の黒髪が揺れる。
私の感情に生まれているのは、ユタが死んだことへの悲しみでは無い。
男が言った通り、憎しみだけだ。
「俺が憎いなら、俺を殺せ。俺を、追って来い。」
その言葉の意味を考えるより早く、男は元来た窓より、去って行った。
まるで風の様な、一瞬の出来事だった。