赤い月夜が僕等を嗤う

□赤い月夜が僕等を嗤う 06―Demise
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「何で・・・・」





私が呟いた言葉に、目の前の相手は返事をする事すらしなかった。
苦痛すら窺える様な瞳を、ゆっくりと閉じて、手にしていた双剣を鞘にしまった。





「何で、ねぇ何で!何で・・・・・っ、何で・・・・」





それしか言う事が出来なかった。他には何も、言葉に出来なかった。

私の視界の中にある、私の部屋。そこは、真っ赤だった。
真紅の水溜りの中、私は狂った様に、目の前の相手に問い続けた。





何でこんな事になったのだろう、か。


記憶は、数時間前に遡る。このときはまだ、こんな風になるなんて、思ってもいなかった。
まだ何も知らず、意味も知らず。










「リディア、夕食。」





用件だけを簡潔にユタは伝えて、色白で美人な顔を、私に向けた。
「うん、行こっか。」と微笑みながら答え、私達は部屋を後にした。





彼は若干十二歳で大臣を務める、非常に優秀な人間らしい。本人に聞いたから間違いない。
この国でこの年齢で大臣になった人は、一人もいないらしいから、本当に優秀なんだろう。

服装に関して尋ねようとすると、「服装なんて、個人の好みだろ」と返答。
裏を返せば、好きで着ている、といったようなものだが。まぁ、似合っているけれど。



そんなこんなで、ユタと初めて出会った日から、二週間ほどが経っていた。
城に来てからは、もう三週間近かった。きっと城下町でも、私の事は噂になっているだろう。





「どうした?リディア」





私が足を止めた事に気づいたのだろう。ユタは、私の顔を覗き込むようにして尋ねた。
首を振って「何でもないよ。」と笑って、彼の腕を引っ張りながら、広間に向かった。
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