赤い月夜が僕等を嗤う
□赤い月夜が僕等を嗤う 01―Originate
1ページ/3ページ
あの日から、私の運命は変わった。変わってしまった。
変わってほしくなんて、無かった。
私が望んだものは、財産でも地位でも名誉でもなく。
平凡でもいいから、幸せな一生を。そう思っていたのに。
その願いすら叶えることは出来ない私を、誰が幸せだと謳うのでしょうか。
「うわああああああああああああああああ!」
自分の悲鳴で目が覚めた。よく晴れた、いつも通りの朝の事だった。
気づけば、手には刀を持っていた。無意識の行動だった。
「はぁっ・・・はぁっ・・・・・・はぁっ」
息が荒い。持っている刀を見つめて、一息ついた。
どんな夢だったのか覚えていないのに、何故か。“それ”が哀しいものであったと、記憶している。
そして、私自身にとって、とても辛いものだったという事も。
私は手にしている刀を持ったまま、起き上がった。
そして道場に向かって、歩いて行った。
私に両親はいない。祖父と二人暮らしだ。
母親の事は、ほんの少し記憶してはいるけれど、父親の記憶は全くない。
幼い頃、泣いて縋り続ける私を置いて、母は蒸発した。
それから今まで十年間、私は祖父の手によって育てられた。
「朝から自主練習とは、素晴らしいな。リディア」
道場に、音も立てずに入って来たのは、私の祖父。この道場は祖父のものだ。
私が幼い頃から、祖父に教わり続けた“刀”。祖父の母国である、東国の辺境地の流派らしい。
「少し、目覚めが悪かったのよ」と返すと、祖父は嬉しそうに笑った。
そして「“これ”を気分転換に出来るのならば、それでいいのだ」と告げる。