赤い月夜が僕等を嗤う

□赤い月夜が僕等を嗤う 01―Originate
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あの日から、私の運命は変わった。変わってしまった。



変わってほしくなんて、無かった。










私が望んだものは、財産でも地位でも名誉でもなく。
平凡でもいいから、幸せな一生を。そう思っていたのに。





その願いすら叶えることは出来ない私を、誰が幸せだと謳うのでしょうか。















「うわああああああああああああああああ!」





自分の悲鳴で目が覚めた。よく晴れた、いつも通りの朝の事だった。
気づけば、手には刀を持っていた。無意識の行動だった。





「はぁっ・・・はぁっ・・・・・・はぁっ」





息が荒い。持っている刀を見つめて、一息ついた。
どんな夢だったのか覚えていないのに、何故か。“それ”が哀しいものであったと、記憶している。
そして、私自身にとって、とても辛いものだったという事も。





私は手にしている刀を持ったまま、起き上がった。
そして道場に向かって、歩いて行った。











私に両親はいない。祖父と二人暮らしだ。
母親の事は、ほんの少し記憶してはいるけれど、父親の記憶は全くない。

幼い頃、泣いて縋り続ける私を置いて、母は蒸発した。
それから今まで十年間、私は祖父の手によって育てられた。





「朝から自主練習とは、素晴らしいな。リディア」





道場に、音も立てずに入って来たのは、私の祖父。この道場は祖父のものだ。
私が幼い頃から、祖父に教わり続けた“刀”。祖父の母国である、東国の辺境地の流派らしい。


「少し、目覚めが悪かったのよ」と返すと、祖父は嬉しそうに笑った。
そして「“これ”を気分転換に出来るのならば、それでいいのだ」と告げる。
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