千年血桜 -鬼-

□0月8日
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――…西本願寺



この西本願寺に屯所が移転してからはや3ヶ月。





『前より広くなったけど……。』








道を曲がって境内の裏手へ。




薄暗い一角に腰掛けた人の姿を見つけると紅は声を上げた。




『敬助、ご飯の準備出来たよ(笑)???』




山「あぁ、君でしたか。ありがとう。」





雪は消えて、桜も過ぎて、今は燕の季節。





『だいぶ、風も暖かくなってきたねぇ(笑)』





山「えぇ。…まぁ、今の私には風より陽射しの強さの方が癇に障りますがね。」





『そう???』





“あんまり強くないけどなぁ”と紅は思った。





そうぼんやりと思っているうちに少し陽は傾いて、一瞬だけ敬助の髪に陽光が触れた。





『ッ!!』




光の悪戯か、刹那のとき、敬助の髪が白く見えた。






山「どうかしましたか??幽霊でも見るような目で人を見るのは礼儀上、あまり良いこととは思えませんが。」





『ぇ、あ!!何でもない!!!』






――…






寄せては返す人の波を平助と一緒に抜けていく。






『そういえばさぁ、平助と巡察に出るの久しぶりじゃね(笑)??』





藤「ん??あぁ、そっかもなぁ。俺長いこと江戸に行ってたし。」





平助は“俺が留守中、新八っつぁんとか左之さんに苛められなかったか”とからかうように紅に言ってきた。






『はははっ。逆逆!!!ウチが2人を苛めてた(笑)!!』





藤「2人とも可哀想だなぁ(笑)」





紅と平助が楽しそうに話していると向こうから総司と千鶴が見えた。



藤「おぉい!!総司、千鶴!!!…そっちはどうだった??」




沖「別に何も。普段通りだね。」






『あ、でも将軍上洛の時は忙しくなるんじゃね???』





沖「そうかもね。…近藤さんも、将軍上洛と聞いて張り切ってるよ。」






藤「あー、うん、近藤さんはそうだろうな。」






平助は気の無い相槌を打ったきり沈黙した。




今日の平助は不思議と彼らしからぬ反応をする。





紅が思案していると…。






沖「……けほっ…こほ。」





総司が咳き込む音が聞こえてきた。




雪「沖田さん…大丈夫ですか??」




『……総司…。』





史実上、総司がどうなるか知ってる紅はどう声をかけたら良いのか分からなかった。






すると急に総司の目が鋭くなった。





その視線を辿りると1人の浪士と若き女の子がいた。






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