短編
□初恋
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俺は柄にもなく、恋をしてしまったらしい。
それも学校のマドンナに。
でも、彼女はマドンナという言葉に当てはまっていると思う。
アイドルっていう安っぽい感じじゃなくて…何て言ったら良いだろう…。
「…大和撫子、かねぇ…」
「龍二、それ食べないんなら俺が貰うけど」
「…って、既に食ってんじゃねぇか!!返せ、三つ網!」
勝手に俺の弁当に手を出した不届き者は俺のダチで、わりと一緒にいる。
名前は神威。とにかく喧嘩好きで世間でいう不良的な感じかな。
でも不良って感じはしない。俺からしたら、悪戯好きの子供だな。
「だって龍二が食べないから要らないのかと思って」
「要るに決まってんだろ!要らなかったら持って来てねぇよ!」
もう既に俺の弁当は空。購買に行って買わなきゃ昼飯が無い。
「おい神威、覚えとけよ。っ俺の貴重な金がぁぁああぁぁ!!」
神威に捨て台詞を吐いて、叫びながら廊下を走って購買部に向かう。
金欠なのにっ…チキショー!
*
心の中で号泣しながら購買部を覗く。
「…っと、なん……もねェ!!?えっなんで!?もう売り切れたの!?おい!」
「ひっ…!は、はい…今日は完売しました…」
「っ!…お、俺の昼飯ィィィ!!」
よりによって完売…
弁当を神威に奪われ、頼りの購買部に来てみれば完売で怒りが溢れた。
購買部の奴の胸ぐらを掴んで、高速で揺する。
もう腹が減って死にそうだ…
「あの」
「うがぁぁ!……ん?」
怒りを購買部くん(勝手に付けた)にぶつけていると、透き通った綺麗な声に動きを止める。
声がした方を向くと、そこには微笑を浮かべた例のマドンナがいた。
「お昼ご飯、ないんでしたらこれを」
「……」
そう言ってマドンナは布に包まれた、恐らく弁当箱を差し出した。
「総ちゃんにあげようと思ってたんですけど、今日はお友達と食べると聞いたのを思い出したので要らないんです」
「…いや、でも…」
「大丈夫、毒は入ってませんから」
そう言って小さく笑った。
初めてマドンナを見た時と同じ動悸がした。
俺やっぱ病院行った方が良いのかな…