短編
□壊して壊れたボク
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―わかっていた。わかっていたはずなのに…
壊れたキミ 壊したボク
「ミツバ、また空を眺めて…体に障るよ?」
「龍二さん。大丈夫よ、最近調子が良いの」
ミツバはふわりと優しく微笑んだ。
けど違う…僕が求めている笑顔とは違う…
「そうだ、明日総ちゃんに会いに行こうかしら」
「っ!…いきなりどうしたの?会いに行くって…」
「総ちゃんが頑張ってる所を見てみたくて、それに皆にも会いたい…」
恐れていた事が起きようとしていた。
ミツバが行ってしまう…
何処へ?
僕の居ない所へ行く…
僕の居ない所…
アイツが居る所…
ガシャァァン―
「っ!龍二さん?…あらっお茶が零れてしまったわ。片付けな…」
「…どんなに想ってもアイツはミツバの事なんか見やしないっ!!」
割れた湯飲みに手を伸ばしたミツバに怒鳴った。
初めから解っていた事なのに勝手に口から溢れてミツバへと投げる。
言いたくない…
けどミツバが離れていくなんて嫌だ…
「…龍二さん、きっと疲れているのね。少し休んだ方がいいわ」
「…気休めの言葉なんか要らない…。いつだって僕じゃなくアイツを見てる…。こんなにも近くに居る僕じゃない……」
言いながらそっとミツバの頬に触れる。
困惑しているミツバを見て悦ぶ自分が居る…
今だけは僕を見てくれる…アイツではないこの僕を―
「ミツバ…どんなに想っても見てもらえない辛さを知っているだろう?何れ程苦しいか…辛いか…」
足元に落ちていた破片を手に取った。
ミツバは動揺しながら僕の名を呼んだ。
「…なぁ、ミツバはどうしたら僕を見てくれる?アイツが死ねば見てくれる?それとも…」
尖った破片をミツバに向ける。
「僕がミツバの目の前で死ねばずっと想ってくれる?」
「龍二さん!そんな事したらだめよ、今すぐ破片を離して…」
ミツバが言い終わる前に僕は自らの手首を切りつけた。
「龍二さん!」
ミツバは僕の名を呼んで破片を奪おうとした。