little story
□花の雨 -フラワーレイン-
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あの時は六月。
机に、頬杖をついて窓の外を眺めていた。
空は重い灰色の雲が広がり、シトシトと雨が降り続いている。
その様子はまるで、今の自分の心を映しているようだ。
一人傘を差して外を歩くと、悲しいことを考えてしまう。
気がつくと涙が頬を伝い、止まらなくなって…。
雨に濡れれば、涙が雨に混じり、わからなくなるだろうと上をむくと、
雨と一緒に白い花びらが降ってきた。
(なに…これ…キレイ)
花びらを受けとめようとして右の掌を傘から出すと、不思議なことに、雨はあたって手は濡れているのに、白い花びらはスッとすり抜けて、地面に落ちたかと思うと消えてしまった。
見えているはずなのに、掴めない。
私だけにしか見えないの?
悲しくて、泣いて、悩んで。
まだ降り続く雨と私にしか見えない花びら。
時が過ぎるに連れて、目も合わせ辛かった人と、今まで通りに話を交わすようになった。
また微笑んでくれた。
それから、見えていたはずの花びらは降ってこなくなった。
雨が降るたびに思い出すけど、今はもう花びらは見えることはない。
END
花映塚
原曲「花は幻想のままに」
NATURAL
アレンジ「FlowerRain」
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