オリジナル小説

□九尾の幼狐と千の罪
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暫く森を進むと少し開けた場所に出た


石楠花「千景様………」


千景「分かっている。雛罌粟、仕掛けろ」


雛罌粟「あいあいさー」


雛罌粟は目の前の茂みに向かって構える


雛罌粟「いくよー、ひーちゃん………」


雛罌粟の足下に魔法陣の様な紋様が浮かび上がる


雛罌粟「カタルシスッ!」


ドオォン!


雛罌粟が拳を思い切り突き出すと茂みはおろか、後ろの木まで薙ぎ倒した。
いやはやスゴいですねぇー、砂煙で何も見えません


雛罌粟「イエイ」


石楠花「………」


千景「………」


雛罌粟「あれ?まだ地味だったー?」


雛罌粟は「カタルシスじゃなくてクライシスの方が良かったかなー」等とブツブツ言っている


石楠花「ひーちゃん!」


雛罌粟「なーにぃ?」


石楠花「強すぎるよ!前から牽制だから軽くって言ってるよね!」


雛罌粟「あれー?そうだっけー?」


石楠花「もうー!千景様からも言って………」


千景「石楠花、雛罌粟。お喋りはそこまでだ、来るぞ。」


千景がそう言うと石楠花と雛罌粟の顔は真剣になり、千景の腰に抱き付く
砂煙が晴れるとそこには………


妖怪「ガルルル………」


千景「報告通り狼型の妖怪か、だが………」


石楠花「あの攻撃で傷は無し、か………」


雛罌粟「おっかしいなー?普通1メートルぐらいの大きさなら弾け飛ぶのにー」


石楠花「やっぱりわざと力入れたねひーちゃん?」


雛罌粟「何の事かなーひゅーひゅひゅー」


石楠花「わざとらしい口笛を………」


妖怪「グゥ……ガルァ!」


石楠花と雛罌粟の下らないやり取りに痺れを切らしたのか妖怪が飛び掛かる。
その直前千景は石楠花と雛罌粟の頭を軽く撫でる、そして………


キィィン!


妖怪「ガゥッ!?」


妖怪は弾き飛ばされる。
さぁさぁ、一体どういう事なのでしょうか?


石楠花『ひーちゃんのせいでギリギリだったじゃない!』


雛罌粟『間に合ったから問題なーし、もーまんたーい』


千景「ふう、やれやれ」


千景サンの両手には二振りの刀が握られ、石楠花と雛罌粟の声はするが姿は無い
この事から導き出される答えは………


千景「行くぞ!石楠花、雛罌粟!」


石楠花『おーっ!』
雛罌粟『おおー』


石楠花と雛罌粟はなんと“刀”だったのです!


千景「ふっ!」


まずは右手の石楠花で袈裟斬りを放つ


妖怪「グルァ!」


その一刀は妖怪の左目辺りを切り裂く


石楠花『もうひとつ!』


そこから石楠花を返し再び切り裂く。さらに左手の雛罌粟で流れる様に斬り上げる


妖怪「ガァッ………」


左目に続き右目、顎を斬られ宙に浮かぶ


雛罌粟『いっちゃえー』


ズシャッ!


石楠花と雛罌粟を交差させるように空中にいた妖怪を斬り裂いく
華麗なコンボが決まりましたっ!


千景「終わったか」


地面に落下した妖怪の亡骸はすぐに塵となって消えていった


石楠花『やっぱり大したことは無いね』


雛罌粟『でも前よりは頑丈だったねー』


千景「原因はまだ分からないが、やはり何かから下級の妖怪が力を受けているようだな」


仕事の終わったためその場を後にしようとした時


ガサガサ


石楠花『っ!千景様っ、まだ何かいる!』


千景はそれを聞くと石楠花と雛罌粟を構え直す。
そして茂みから現れたのは………


?「こぉ…ん………」


雛罌粟『キツネさん?』


パタッ


狐はひと鳴きするとそのまま倒れる


千景「怪我をしているのだろうか………」


千景がその狐に近付こうとした瞬間


ドオォォン!


突然横から爆音が響く


千景「っ!?」
石楠花「わわっ!?」
雛罌粟「おおっとー」


石楠花と雛罌粟は咄嗟に後ろへ飛び退き、千景は狐を素早く抱き上げ石楠花と雛罌粟とは逆方向に転がる


?「グォ…グォ……」


石楠花「な、なにコイツ?全然気配に気付かなかったよ」


雛罌粟「またオオカミさん?でも今度はにそくほこー、わーうるふだねー」


突然現れた妖怪は千景の抱き抱えている狐を見ると


妖怪「ソイツヲ…ワタセ」


千景「この狐を狙っているのか?」


妖怪「ワタセッ!」


妖怪は千景に向かって飛び掛かる


石楠花「させないっ!」


雛罌粟『たあー』


石楠花は刀化した雛罌粟で妖怪に斬り掛かるが………

スッ


石楠花「チッ!」


雛罌粟『避けられたねー』


妖怪は大きく跳躍し、石楠花の後方に着地する


千景「すまないな」


石楠花「ごめんなさい、仕留めるつもりが………」


雛罌粟『でも“印”は付けたよー』


千景「ああ、上出来だ」


妖怪「キサマラ………」


邪魔をされて憤怒する妖怪は再び襲いかかろうとするが………


妖怪「ウグッ!?ナン…ダ、コ…レハ」


妖怪は力が入らなくなり膝をつく


石楠花「“失力の印”、それがある間は力があんまり入らない」


雛罌粟『だるだるでしょー』


妖怪「クッ…ツギハ、カナラズ………」


妖怪はそう言うと森の奥へと消えて行く


石楠花「待てっ!」


雛罌粟「しーちゃん、めっだよ?」


ぺしっ


石楠花「あう」


妖怪を追おうとする石楠花を人化した雛罌粟が軽く叩く


石楠花「でも………」


千景「雛罌粟の言う通りだ、深追いはいけない」


石楠花「………ごめんなさい」


石楠花は肩を落とす
しおらしい彼女もなかなかそそられますねぇ


千景「取り敢えず今は家に戻って、この狐の手当てをしよう」


石楠花「うん」


雛罌粟「キツネさん大丈夫かなー?」
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