SS-葛葉-

□禁忌
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我は十四代目葛葉ライドウの目付役、業斗童子である。“ゴウト”とでも呼んでくれ。
目付役の我が言うのもアレだが、十四代目は優秀なサマナーだ。知性に溢れ、武術に優れ、容姿は男と思えぬほど麗しい。そして何よりサマナーとしてのセンスは群を抜いている。それを驕ることもなく人当たりも良い。だが一つだけ気にかかることがある。それが原因で十四代目が壊れてしまうのではないかと…





『禁忌』





最近、ライドウの表情が少し豊かになった。何を言っても無表情だったライドウが微笑むようになった。鳴海もその僅かな変化に気付いているようだ。
人との交流を最小限に抑え、葛葉の里で修行漬けの毎日を過ごしていたライドウは感情を表に出すことを苦手としている。帝都で様々な人々と交流し、たくさんのモノに触れることで、人並みとまではいかないが、感情というものが芽生えてきたらしい。葛葉の者が命じた帝都守護は少なくともライドウにとっていい影響を与えている。とても喜ばしいことだ。しかし、目付役としては大きな不安を感じることもある。感情がある故の不安。ライドウの微笑みが我の心の蔵を突き刺すのだ。





「ライドウもコーヒー飲むか?」

「いただきます。」


依頼も学校もなく、ゆったりとした時間。
ライドウは鳴海が好きだ。鳴海もライドウが好きだ。本人達は何も言わないが、見ていて分かる。普段の何気ない会話でも幸せ臭が漂っている。気持ちを伝え合ったわけではないようだが、本人達は今の状態でも満足している。性別や年齢など問題は色々あるが、我が口を挟むことではない。鳴海という男は気に食わないが、ライドウを任せてもいいと思っている。ただ、この幸せ臭いっぱいの部屋は我にとっては居心地が悪すぎる。最近は依頼続きで休む暇がなかったな。暫し二人の時間を作ってやろう。


『ライドウ、今日は依頼もないようだ。一日ぐらいゆっくりしても罰は当たらんだろ。我は屋上で昼寝でもしてくる。何かあったら声をかけてくれ。』

「ああ、分かった。」


我の意図を知ってか、ライドウが少し頬を染めながら微笑んだ。この純粋な新米ライドウはどこまで分かっているのだろう。やはりこの青年の微笑みは苦手だ。



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