なぜ、


「助けてっ、ーーーうわぁぁぁ!!」


どうして、こんな事に。


「嫌だぁっ!死にたくないぃぃ……!!」


俺の、…俺たちのしてきたことは、何だったのか。


中東、クルジス共和国。
正確には、

崩れ落ちた建物や地を走る炎
あちらこちらから聞こえる悲鳴
舞い散る黒い灰

「国」というには程遠い、「地獄」と形容した方が正しいと思えるような、そんな場所。

そこで呆然と立ち尽くす一人の少年の手には、彼や悲鳴の主である他の子供達を兵士としてここに送り込み、つい先ほど見捨てた大人から奪った、古びた剣。
それが「聖遺物」であることを、少年は知らないが。

彼の目の前には、赤く輝くディスプレイのようなものを持った化物。それは声を発することなく、少年に近づいてくる。

視界の先では、少年の目の前にいるものと同じような化物が、逃げ惑う子供達に次々と迫る。
彼らに触れられれば最後、共に黒い灰と化し、命を落とす。舞い散る灰は、化物とそれに触れられた子供が変化したものだった。


ああ、死ぬのか。
目の前に死が迫っているというのに、少年は冷静だった。
これまで、[神]というものを信じて戦ってきた。
しかし、そんなものは初めから存在していなかった。
いるはずのない神を信じて、自分はたくさん人を殺した。
両親の命も奪った。
これはきっと、その報いだ。
ならば、それを受け入れるまで。

少年は剣を握りしめ、固く目を閉じる。
その時。



ーーUther Dior excalibur tron


頭の中で、歌が聞こえた気がした。


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