□プール
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名前を呼ばれて前の少年をみれば、不思議な目で俺を見つめていた

当たり前か

同じクラスでもない俺が男の手を握ってるなんて

「起きたか」

そぅ言うと手を離そうとする



墨村は気絶した後と思えないほどの力で手を握り返してきた

少しだけ俺の体が火照るのが分かった

それを悟られたくなくて

「手ぇ離せ」

と言う

すると墨村がムスッとして反論してきた

「嫌だ…ッ…ゴホッ…ゲホッ…ゲホ…ッ…」

小さな体が苦しげに咳き込み身をよじる

悩んだ末細い背中を撫でてみる

すると少し落ち着いたのか深めの深呼吸をする

墨村は何を思ったのか

「志々尾…」

と呟き俺の首の後ろに腕を回す

「なっ…墨村…!?」

俺は引きはがそうとする



再び咳き込まれ肩をつかむ腕に力を入れられず、その体勢のまま固まる

「ゴホッ…ゲホッ…ゲホッ…」

墨村の咳がなかなかとまらない

苦しそうに肩を上下させとまったと思うと再び咳をする

俺の肩に頭をつけ尋常じゃないくらいの息づかい

少しずつあいつの体が熱くなる

「…墨村…無理に息吸わないで…ゆっくり…」

俺はぎゅぅ…と抱きしめ背中をさする

それで落ち着いたのか咳はとまる

「はぁっ…んぁ…っ…」

…その息づかいはエロいだろ…

ゆっくりと顔を上げた墨村と目線が逢う


志々尾と目線が逢って思った

…離れたくない…

改めて深呼吸をすると喉がひゅーひゅーなる

「ありがと…」

俺は腕に力を少しだけ入れおでこを肩にあてがう

すると躊躇しながらも優しく頭を撫でられる

それが嬉しくて甘えるように擦りつく

今度は困ったように抱きしめられた

こいつ…あんまり人に触んないんだよな…

安心…させたいな…

俺は…壊れないって…

いなくならないって…

…裏切らないって…

決心を決める

志々尾の耳に口を近づけ

「…」

小さく言う

すると驚いた顔をしてすぐに頬を朱色に染める

たまには保健室でサボるのもいいかな



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