□その男
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少年A「なぁ知ってる?」

少年B「なにがよ?」

少年C「どった?」

少年A「志々尾また鎖で繋がれたらしいぜ」

少年C「はッ
ざまぁねーな」

少年B「ホントバカだな」

少年A「それなのに烏森に行くらしいんだよ」

少年C「烏森って頭領の実家なんだよな?」

少年A「そーそー」

少年B「ぜってー俺の方がうまくやれんのにさー」



「ッ…はぁ…」

夢だ

裏会の庭で聞いた

陰口

なんでだか

胸が詰まる

息がしにくくて

自然と一粒の滴が

頬を流れ

布団に小さな染みを作る

すると

「…志々尾…?」

暗い部屋に驚くほど近くから名前を呼ばれた

「ぁ゙…」

不機嫌を装って顔を上げてみれば暗闇に浮かび上がる白い肌

ふわふわの黒髪は闇と同化してしまってあまり見えない

でもなぜ墨村がいるんだ

ちらりと時計を盗み見れば

午前3時

どうやら寝過ごしてしまったらしい

珍しく学校に来なかった俺を心配してなのか墨村が訪ねてきた

こんなところか

でも墨村の様子がおかしい

と思った

墨村は俺との少しずつ距離を縮め

息が当たるぐらいまで近づくと

唇を重ねてくる

墨村の唇は柔らかくて暖かいはずなのに

触れられるところから体は冷え切って

気持ち悪いとさえ思った

抵抗を見せない墨村の体を押しのける

暗闇の中なのに墨村の体はうっすらと浮かびあがる

よく見ると

服を着ていない

一糸纏わぬその姿は

卑猥そのもので

俺を誘う

なんど

体を重ねあいたいと思ったか

なんど

愛しあいたいと思ったことか

墨村を無理やり押し倒し馬乗りになる

冷えた目をこちらに向けるが関係ない

今すぐにでも犯しつくしたい

俺だけしか考えられないように

やっと

墨村が俺のものになった




「ししおぉー!!」

「ッ!!」

目の前にあるのは墨村の顔

優しげな瞳

あれは夢だったのか…

小さなため息をつくと心配そうに俺をのぞき込む

くしゃくしゃと頭を撫でればまばゆい笑顔

ふっと黒猫が目に入る

凛とした猫だった

何だったっけ…

夢魔だったか…

何か動物に化けて夢をみさせるのは

…夢?

…夢魔…?

まさかな

「志々尾ー
帰るぞー」

「…あぁ」



その男

愛するが故の強行

しかし愛弟に伝わらず

儚く消えゆこの想い



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