逃
□息が途切れそうになる、この感覚はなに…?
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屋上にでてみればやっぱり墨村の姿
今日は結界を張らずに寝ている
まだ肌寒い風が吹いているのに
傍によって顔をのぞき込んでみると
泣いていたのだろう
目の下が真っ赤だった
きっとこいつは
志々尾を思って泣いた
俺がどれだけお前のこと好きでいても
俺がどれだけお前の傍にいたとしても
この気持ちは伝わらない
伝えられない
伝えたら
終わってしまうから
この距離が縮まることは永遠になくなる
無防備な
寝顔さえみれなくなる
小さな呟きさえ
ききとれなくなる
傍にいたい
志々尾より俺の方がお前の傍にいれる
お前をおいていなくなったりなんかしない
口に出しかけて
飲み込んだ言葉
伸ばしかけて
握りしめた拳
墨村が寝返りをうつ
と
「しし…お…」
あぁ
俺じゃだめなんだ
志々尾がいいんだ
フワフワな髪にそっと触れる
ふるえる手がもどかしい
なでられて気持ちいのかにこりと笑う
志々尾
これだけは許してくれよ
俺は墨村の額にかかる前髪を払い
触れるだけのキスを落とした
「ずっと好きだったよ」
言えるのはそれだけ
この気持ちを過去にできたらどれだけ楽か
でも好きだから
忘れたくない
この気持ちを抱き締めて
お前が志々尾を
夢見ない日が訪れなくなったら
言おう
.