□触れてしまえばV
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いつの間にか頭領は消えていた

…殺そうとしたくせに…

ユラユラと怪しげな月が俺を見下していた


今日はあまり妖は来なかった

雑魚ばかりである

嵐の前の静けさ

まさにその言葉がぴったりだった

妙な胸騒ぎが俺をさいなむ

ポケットに入った卵にも

何度潰そうかと思ったか

でもー…

[…姿…を…見てみ…たい…]

「ッ!!」

…俺の声…

じゃない…のに…

じわじわと心に闇が広がるのが分かる

ポケットから卵を取り出し眺める

小さな卵からはぼんやりと影が見えていた

こんな小さなもの変化しなくても握り潰せる

それなのに

こんな小さなモノに何かを求めているのか指にすら力が入れられない

何事もなかったかのようにポケットへしまい込む

けして言えない

「志々尾ーー!!」

墨村が呼んでいる

最近毎晩練習するらしいが今日は特に気乗りしない

ノロノロと歩く

すると墨村は怒ったように隣にきてグチり始めた

「なぁ
志々尾…
聞いてんのかー!!」

「…ん…?」

「兄貴来てなかったかって聞いたんだよ!!
斑尾が匂いするって言ってたから」

「…いや
見てない…」

「そっかぁ…
でさっ…」


数日後

頭領は東北へ向かった

軽口を叩いていたがなかなか面倒らしい

アトラからも電話があった

…烏森にきたら俺の部屋に泊まるって…

部屋に呼べなくなるじゃん…



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