BROTHERS LONG

□Mon soleil.
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翌日


洋館近くの、海辺での撮影

ボクとのシーンは先に取り終え、残るは風斗くんのラストシーンのみ


そんな所で、スタッフの人に呼ばれ…

「今日の打ち上げにケーキを用意してあるんだけど、ルナちゃんから風斗くんに渡してくれない?」


打ち上げのワンシーンをCDの初回特典に使いたいらしく、風斗くんにケーキを差し出すルナの図が欲しいとのこと

しかも、ケーキのデコレーションをボクにやって欲しいから、今から洋館内にあるキッチンに来てって…


『ボクに出来るかな…』

「大丈夫!ルナちゃんが作ったってだけで、話題性抜群よ!」


ウインクしながらそう言ったスタッフ


センスないって言われない様に、気をつけますね

と笑いながら、洋館へ向った



・・・・

洋館へは10分も歩けば着く場所にあるんだけど、スタッフの人も忙しそうだったから

車出すからと言われたのを、遠慮させてもらった


一人で海辺を散歩してるみたいで、いいなぁ…


そう暢気に歩いていると、岩場の陰から誰かに呼ばれた



「ねぇ。アナタでしょ?」


振り返ると、女の子が3人…雑誌を広げてボクを睨んでいた

ああ、前のルナでインタビューに応えた時の記事だ

今はルナの姿だし、気をつけなくちゃな…


『そうだよ』


いつものように笑ってそう言うと、女の子達は少し怯んだ様子で再び口を開いた


「風斗くんと仕事するの、止めてくんない?」


えっ…ああ!!これがよくある、アイドルに嫉妬しちゃう、追っかけの行き過ぎた子達ってやつか!


「なによ。何とか言いなさいよ!」

『え…えっと。ムリかな』


もう撮影しちゃったし!と付け足して言うと…


「記事に出てるPVは諦める。けど、それ以降の仕事は辞めて」

『えーっ』


多分、今のボクは凄くこの子達をバカにした顔をしちゃったと思う

だって…ねぇ。

好きなアイドルに女の子が近づくのが嫌な気持ちは、分からないでもないけどさ…

高校生くらいのお姉さんが、やるような事じゃないと思うんだ


「その表情!なんなのよ!!」


すると1人の女の子が手を上げて、その上げた手を振り下ろした

バシッと、肌にヒリ付く痛みが走る


「ちょっ、手を出すのはマズイよ」


仲間内の1人がそう言ったが、手を出した本人にその声は届いていない


『はぁ…。風斗くんはさ、1人で仕事してると思う?』

「はっ?」


紅くなった頬に手を当てて、ボクは彼女を見た


『最近、風斗くんが俳優業に力を入れてることは知ってるだろうけど、俳優なんて典型的に相手役が必要な仕事

その相手役を排除しようとしているアナタは、風斗くんの仕事の邪魔をしているんだよ

ましてや、自分が努力している仕事を妨害されるだなんて、風斗くんはどう思うのかな』



そう言うと、女の子は岩の隅にあった鋭利な石を掴んで


「アンタは新人のくせに、生意気だって言ってんのよ!」

その言葉と共に、此方へ石を投げてきた


『…っ』


すると、直に鋭い痛みが脚を襲い

ストッキングは破れ、患部に血が滲んだ


「や、やばいって!!」


女の子の1人が流石に止めに入って、その場から逃げようとし出す


「私は風斗くんに変な女が寄り付いて、仕事の邪魔にならないように見張ってるだなんだから!」


そう言い捨てて立ち去ろうとする彼女に、ボクは言葉を投げた


『仕事の邪魔?本当に言ってるんだったら、それは違う。アナタは風斗くんの仕事の邪魔をしてるだけ』


私が今、こうして怪我をしたことが世間に報道されたら、どうなるか分かる?

そう続けると


「し、知らないわよ!」


怒鳴る声で、そう返された


『こういった事件が起こるとね、風斗くんの活躍できるステージが狭まるんだよ』

「なんでよ!」

『風斗くんのファンが起した事件ってことで、彼のイメージダウンに繋がる。それに、最悪PVの発売延期や中止だって、ありえない話じゃなくなるんだよ』

「…っ」


次第に脚の痛みに耐えきれなくなってきて、ボクはその場にしゃがみ込む

その様子を見て、余計に焦ったのか…


「行こう!!」


女の子3人は、駆け足でその場から離れて行った


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