BROTHERS LONG

□Mon soleil.
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あの一件から、数日後


ボクの願いと事務所の意向もあって、彼女達を警察に届けることはしなかった


けれど、最近はどのニュース番組を付けても、La luneの所属する大手事務所の新人タレントが襲われたと報道が流れていて

新人アイドルとして売り出しているルナには、まだ朝倉風斗との仕事しか世間には報道されていないから

その仕事を良く思わない朝倉風斗のファンによる仕業ではないかと、噂と言うか事実と言うか…そんな話で世間は持切りだった


椿「茉矢〜っ!なんか食いたいもんとかある?」

『ありがとう。けど、そんな気にしなくて大丈夫だよ』


家に帰るものの、1時間おきにそう聞いて来る椿兄

ボクが帰宅して早々、脚の包帯に気がついたらしく…そこからは、煩くて仕方が無かった。心配してくれるのは、嬉しいんだけどね

この怪我も傷は塞がってるけど、傷の範囲が広いから念のため包帯を巻いてるだけ

処置が良かったせいか、幸いにも傷跡にはならなさそうだし


椿「俺さ、居ても立ってもいらんないんだけど」


確かに、テレビを付けるとひっきりなしに事件のことが流れて来る

他に報道するような事件がないってことだから、平和で良い事なのかもしれないけど…


『心配しすぎだよ。ちゃんとボクは此処にいるでしょ』


そう言って、ソファーに腰掛けていた椿兄の脚に頭を乗せる。そして、ボクはこれで充分だからと言って、瞼を閉じた




・・・

ガヤガヤとした声が遠くから聞こえて来る

聞き慣れた声と…って、あれっ。


風「なんで、茉矢がアンタの膝の上で寝てんだよ!」


ボクは眠たい目を擦りながら、ゆっくりと起き上がると…


椿「あっ、起きちゃったじゃんか〜。俺の至福の時間が…」

風「なに言ってんだよ。茉矢、歩ける?」

『うん』


学校帰りなのか、珍しく制服姿の風斗くんがいた


風「じゃあさ、僕の部屋に来てくれない?さっき、スタッフの人から茉矢へのお見舞いって言われて、預かったものがあるんだ」

『そうなんだ、ありがとね』

椿「えーっ、行っちゃうのかよ」


椿兄にも膝枕のお礼を言って、また後でね。と、リビングを後にした



・・・


風「これが預かって来たもの」


部屋へ入り目の前に広げられたのは、ボクの好きな沢山のチョコレート箱と数枚の写真


風「この写真さ、綺麗だと思わない?」


その写真に写るのは、海を眺めている自分の姿

透明な空気感が、こちらにも伝わってくるような一枚だ


風「偶然撮れたものらしいけど、これをルナのイメージ写真として使おうって話してたよ」

『うん。これなら満足かも』


僕に焼き回しして欲しいんだけど、なんてスタッフに頼もうかな…なんて、呟く風斗くん


風「あとさ…事件のほとぼりが覚めるまでは、CDの発売延期が決まったよ」

『…そっか』

風「ごめん」

『なに言ってるの、一番悔しいのは風斗くんでしょ』

風「でもさ…」

『はいはい。この話しは終わり!』


ありがとうって小さくお礼を言われて、風斗くんはスクールバックの中に手を入れた


風「これもお見舞いだってさ」

『これって…』


小さくラッピングされた小箱


風「うちのクラスからだよ。みんなルナのことは知ってるからさ」

『茉矢じゃなくて、ルナを既に知ってるって…なんだか不思議な気分』


渡された箱を開けると、中にはUSBが入っていた

なんだろうとPCを借りてデータを開くと、1件のムービーが再生された




・・・

「ルナちゃん、お久しぶりです!」


その言葉から始まったムービー

内容は、今回の事件を聞いてのお見舞いと、文化祭のお礼のメッセージ

そして…

「文化祭の時のダンスで、私たちなりのルナちゃんへの応援の気持ちを伝えたいと思います!」


ボクに元気になってと、文化祭で踊ったあのダンスを踊ってくれた

最後は、また学校に遊びに来てね。と可愛らしい演出で終了


・・・


風「最近、やけに教室がファンシーな感じになってると思ったら、アイツ等こんなことしてたんだ…」

『…っ』

風「茉矢…?」


気が付くと、ポロポロと涙が出ていて…


風「ど、どうしたの?」

『凄く嬉しいんだ。みんなに、ありがとう頑張るね!って、伝えてもらってもいいかな?』


それなら良かったと、ほっとした表情をする風斗くん


こんなにもルナを応援してくれる仲間がいるんだから、ボクもルナを中途半端になんて出来なくなっちゃったな


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