BROTHERS LONG
□Mon soleil.
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朝倉風斗 新曲PV撮影当日
時代は中世のヨーロッパ
ヴァンパイアが人間の女の子に、叶わぬ恋をしてしまう話…か
なんだか、切ない物語
そう思いながら、漆黒のマントに身を包んだ風斗くんを見ていた
『それにしても、似合ってますね』
「えぇ。流石、朝倉くんよね」
既に撮影は始まっていて、ボクは自分の番が来るのを椅子に腰掛けて待っていた
こんな建物が日本にあったなんて…
と思ってしまうくらい、今回の撮影にピッタリの洋館
普段は結婚式場に使われてるみたいだけど、プロの演出でヴァンパイアチックな洋館になっている
元々は、イギリスにあったお城をそのまま移築した建物らしいんだけどね
「このシーンを撮り終えれば、茉矢く…じゃなくて、ルナちゃんの出番ね。準備しなくっちゃ」
そう言って、動き出したスタイリストさん
スタッフは皆、ルナがボクだと分かっているから仕事はやり易い
ただ世間には極秘のプロジェクトだから、ルナという新人のタレントがボクだなんて極一部の人しか知らないこと
マ「ウチの社長とFortteさんとこの社長が最近仲良しだったから、こんな妙な企画も通っちゃったのよねぇ
お陰で私は寝不足よ…」
なんて愚痴を零しながらも、ボクの女装姿を見て一番キャッキャと喜んでいたのはこのマネージャー
可愛いのなんのって煩かった
終いには「養子でウチの子にならない?」なんて、未婚のくせに訳の分からない事を言い出してたし
マ「まっ。高校生になったら、こっちの方向で私がサポート
出来るってことね」
『…』
なんとなく言わんとしてることは分かったけど、La luneのマネージャーはどうするのって事と、ボクは元の姿に戻っても芸能活動を続けるだなんて言ってはいない。
ニヤニヤとしているマネージャーは放っておいて…
ボクはまた風斗くんへと目線を戻し、どうこの演出に溶け込もうかと考える
PVなのでセリフこそないけれど…
だからこそ、他に求められるものは多く表現が難しい
けれど、目の前にいるのはヴァンパイアそのものだった
家でもヴァンパイアについて熱心に調べていたし、きっとこういう人を秀才って言うんだろうな…なんて思っていたら、ボクの名が呼ばれた
・・・
〜♪〜♪〜…。。。
空気感が深い深い青へと沈む
それは、風斗くん演じるヴァンパイアによるもの
ボクはそのヴァンパイアの存在にすら気がつかない、中世のヨーロッパに居そうな普通の女の子の役
悲しみに悶えるヴァンパイアを他所に、女の子は違う男性へと目を向けてしまう
だけど、その男性は…
そんなストーリーを撮影した所で、監督の声が響いた
「OK!!!」
スタッフが一斉に拍手をする
「今日はここまで!明日も宜しく!」
明日は、海辺での撮影
PVのラストシーンだ
風「お疲れさま」
『お疲れさまでした、私のヴァンパイア』
風「えっ、なにその言葉。此処で噛み付かれたいの?」
『ダメだよ。ヴァンパイアは健気に散る予定なんだから』
風「アドリブって知ってる?」
『…さっ。明日も早いし帰ろうか』
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