BROTHERS LONG

□Mon soleil.
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帰国して数週間後


本日、風斗くんは仕事

ボクは明け方に仕事が終わったから、日中を自宅のリビングで過ごしていた


椿「えぇ〜っ。また、そーめんとスイカかよ」

右「文句を言うんじゃありません。腐らせてしまっては勿体ないでしょう」

『…ごめんね』

椿「ちがっ、茉矢は何も悪くないんだ!」


最近、そーめんとスイカがよく朝日奈家の食卓に並ぶ

なんでかって言うと、先日の特番でイタリアロケの結果発表があったんだ

でっ、優勝者にはなんとそーめんとスイカ半年分が贈呈されたんだけど…うんっ、それがボクらだった

豪華賞品…か。

本来なら優勝者が山分けして自宅に持って帰るから、量的には半分になる訳なんだけど

ボクと風斗くんペアが優勝してしまえば、必然的に同じ家だから山分けすることなく持ち帰りになってしまった

はぁっ…スタッフや他のメンバーにもお裾分けしたんだけど、あんまり減らなかったし


『そーめんは良いけど、スイカはこのままだと腐っちゃいそうだよね』

椿「だなぁ〜。あっ!俺にイイ案があんだけど」


つば兄曰く、なんでも三つ子のもう一人である棗さんが大のスイカ好きらしい

1日に2玉はスイカを食べないと禁断症状が出るそうでって…えっ、ホントかな

まだ棗さんには会ったことがないし、良い機会と思って挨拶も兼ねつば兄とスイカのお裾分けをしに行くことになった


・・・

椿「おーいっ。お兄ちゃんが来たぞー!」


玄関前で大きなスイカを1人2玉づつ持ち、棗さん家の扉が開くのを待つ

ここまではつば兄の車で来たから良いんだけど、部屋まで運ぶだけでも結構…お、重いっ

少しすると、ガチャッと扉が開いて家主の棗さんが顔を出した


棗「椿…と、お前は確かアイドルの茉矢…か?」

『はいっ、はじめまして。麟太郎の連れ子ので、これから義理の弟になる朝日奈茉矢です』


自己紹介は何があっても笑顔っていう、アイドルの悲しい性が…っ

そ…それより早くスイカ…をっ


棗「…そうか、驚いたな。俺は朝日奈棗だ」

椿「ほらほら、棗どいて。茉矢〜っ、上がっておいで」

『あ…えっと』


棗さんを除けて先に部屋へ入ったつば兄

棗さんを見れば上がるように促してくれたので、ようやくスイカを部屋に置くことが出来た


椿「んじゃ、茉矢は此処に座ってね!」


ぽんぽんっと自分の膝を叩くつば兄を華麗に無視して、窓際に腰を下ろした

すると、棗さんがお前も大変だなって

あぁ、棗さんも大変な思いをされてきたんですね


椿「もーっ、茉矢ってば恥ずかしがりやさんなんだから」

『ボクはもう中学生なんだよ?』

椿「つっても、まだ一年生じゃん」

棗「それにしても小柄だな。ちゃんとメシ食ってんのか?」

『えぇっ。不規則な食生活ですが、一応気をつけるようにはしています』


棗「そうか。というか、そんなに改まらなくても良いんだぞ」


もう兄弟なんだろって、優しい表情を浮かべてくれる棗さん

それと、呼び方も他の兄弟と同じで構わないと言われたので、遠慮なく呼ばせてもらうことにした


椿「それにしてもさ、よく流行に疎い棗が茉矢のこと知ってたよなぁ」

棗「外を歩けば1日に何度も見る顔だからな、流石に覚える」

椿「確かにそうだよな〜。看板やら街頭モニターやらすっげぇもん」

棗「それと…うちの会社で、茉矢をイメージキャラクターに起用するって話があってな」

椿「もしかして、妹魔の!?」

棗「あぁ」


イモマ…??


『それって何ですか?』

棗「妹は魔法少女。通称、妹魔って言う今大反響中のゲームだ」

『棗さんのお仕事って…?』

棗「ゲーム会社だ」

『でも、どうしてそれにボクが…?』

棗「知らないのか?今、一部の業界でお前が妹魔の主人公にそっくりだって話で持切りなんだぞ」

『いえボクは何も…あっ。そういえば、つば兄と初めて会った時にそんなことを言われたような』

椿「そーそっ。マジでそっくりなんだぜ」


そう言って、スマホのディスプレイに写った主人公を見せてくれた


『似てるかも…』

椿「ぶっちゃけ、茉矢ファンのヤツがこのキャラクターデザインしたんじゃねぇかって言われてんだよ」

『でも、これ女の子でしょ?まさか、ボクがこのフリフリな格好したりはしないよね…?』

棗「…頑張れよ」


えっ


椿「いやぁ。リアル妹魔がみれるかもしれないなんて思うと、すっげぇ興奮する」

『…その仕事断ろうかな』

椿「なっ!!絶対にダメ。つか、仕事が断る程あるなんて流石っていうか、なんつーか」

棗「おいおい。これから正式に会社通して依頼かけるのに、物騒なこと言うのやめてくれ」


ボクを起用すれば数億円が動くと見積もられているらしく、かなりの大勝負らしい


棗「けど、茉矢を起用するのがかなり大変らしくてな…。春のアイドルを使うのもうちの会社なら簡単なんだが、茉矢は値段もスケジュールも別格すぎる。今こんな話をして悪いが…もし気が向いたら、お前から事務所に言ってもらえると助かる」


そう言ってアイドル茉矢を起用するに当たっての資料を仕事用のカバンから取り出し、ボクに手渡した

アイドルの建前を崩さない配慮がされているのか、そんなに悪い内容でもなさそう

汚れ仕事になってしまえば事務所が承諾する訳もないし、そこは配慮しての企画なのかな


『わかった。前向きに検討する』

棗「よろしく頼むな」

椿「もしかすると、俺とも一緒に仕事する日が来ちゃうかもしれないなー!」


どういうことかと、つば兄の方に顔を向ければ意気揚々と説明してくれた


椿「俺、妹魔の兄貴役CVやってんだよ。つーわけで、茉矢がイメージキャラクターになれば妹魔イベントに俺たち声優と、ゲストで茉矢が呼ばれるだろうから一緒に仕事出来るんじゃないかってコト」

『へぇ。楽しそうだね』


朝日奈家に来る前までのボクなら、女装っ気のある仕事は絶対に断ってきたんだけど…

どうしてかな

ちょっと、やってみようかななんて思ってしまった


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