STORY
□過去の鏡【T】
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大きく丸い、目。
いつもより柔らかく、小さくなった、手。
すっかりブカブカになってしまった眼鏡と白衣。
そのままを保った髪型。
明らかに縮んだ身長。
「おいおい……ちょっと待て」
本の波に埋もれたまま、絵本に夢中になっている少年、いや幼児に、捲簾は頭を抱えた。
「けんれん?」
幼児特有の、少し舌っ足らずな口で名前を呼ばれる。
「ど〜したんですか?」
絵本を放り出し、その小さな手は捲簾の頭を撫でる。
口調は相変わらず、だが、やはり違うものがあるのだ。
「何でもねぇよ。……天蓬」
幼児を呼ぶその名前を、捲簾は信じたくなかった。
「過去の鏡」