STORY

□過去の鏡【T】
1ページ/4ページ

大きく丸い、目。
いつもより柔らかく、小さくなった、手。
すっかりブカブカになってしまった眼鏡と白衣。
そのままを保った髪型。
明らかに縮んだ身長。

「おいおい……ちょっと待て」

本の波に埋もれたまま、絵本に夢中になっている少年、いや幼児に、捲簾は頭を抱えた。

「けんれん?」

幼児特有の、少し舌っ足らずな口で名前を呼ばれる。

「ど〜したんですか?」

絵本を放り出し、その小さな手は捲簾の頭を撫でる。
口調は相変わらず、だが、やはり違うものがあるのだ。

「何でもねぇよ。……天蓬」

幼児を呼ぶその名前を、捲簾は信じたくなかった。

「過去の鏡」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ