STORY
□過去の鏡【T】
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『けんれッ…ん…もう…やぁ…!』
昨日の夜。
二週間に渡る長期任務から帰ってくると、捲簾はお構いも遠慮もナシに天蓬を抱いた。
よほど溜まっていたのか、朝方にやっと、しかも殆ど気を失ったように眠る天蓬を解放する。
『ん……』
目を閉じると子供っぽい。
捲簾が少し前に天蓬にそう言われた。
今にしてみれば、ハッキリ言ってやれるだろう。
『お前も似たようなもんじゃねぇか』
と。
捲簾と天蓬は、お互いの過去を知らない。
知りたいとも思ってはいないだろう。
……天蓬に限っては。
捲簾なら、知りたいまでは行かずとも、写真位は見たいと思っているだろう。
『今もそうだが……』
昔はもっと可愛かったろうに。
言葉の続きは、飲み込まれてしまった。
ピクッと動いた、天蓬の瞼。
それを見てしまったら、捲簾には止めざるを得ない。
バフッ!
天蓬の隣に寝そべる捲簾。
もう寝よう。
そう思った結果だ。
きっと天蓬のことだ、写真なんざ残ってない。
所詮は夢物語だ。
そうして捲簾は目を閉じた。