STORY

□過去の鏡【T】
2ページ/4ページ


『けんれッ…ん…もう…やぁ…!』

昨日の夜。
二週間に渡る長期任務から帰ってくると、捲簾はお構いも遠慮もナシに天蓬を抱いた。
よほど溜まっていたのか、朝方にやっと、しかも殆ど気を失ったように眠る天蓬を解放する。

『ん……』

目を閉じると子供っぽい。
捲簾が少し前に天蓬にそう言われた。
今にしてみれば、ハッキリ言ってやれるだろう。

『お前も似たようなもんじゃねぇか』

と。

捲簾と天蓬は、お互いの過去を知らない。
知りたいとも思ってはいないだろう。

……天蓬に限っては。

捲簾なら、知りたいまでは行かずとも、写真位は見たいと思っているだろう。

『今もそうだが……』

昔はもっと可愛かったろうに。

言葉の続きは、飲み込まれてしまった。
ピクッと動いた、天蓬の瞼。
それを見てしまったら、捲簾には止めざるを得ない。

バフッ!

天蓬の隣に寝そべる捲簾。
もう寝よう。
そう思った結果だ。
きっと天蓬のことだ、写真なんざ残ってない。
所詮は夢物語だ。

そうして捲簾は目を閉じた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ