海が導く
□act.94
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黄色の潜水艦から出てきたローは、ルフィとエースをこちらに渡せと言い出した。
「グズグズするな!早く渡せ!!!」
「たから、どこの馬の骨だってんだよ!!」
二人の話が進まない所為で、状況は悪くなる一方だ。
「ロー船長!!軍艦が沖から回り込んで来た!!」
最悪な事に、軍艦が沖から大砲まで撃ってきたのだ。
「急げ!!!三人共こっちへ乗せろ!!!」
砲撃が激しくなっていき、このままこの場に居ては無事ではすまない。
『早く三人を彼に渡して!!!早くしないと貴方も危ないわ!!!』
なかなか三人を渡さないバギーに、永久はバギー自身も危険なのだと叫んだ。
「一体、どういう…」
どういう事だ。と続く筈だった言葉は、服をかすっていった光線によって中断させられる。
「置いてきなよォ〜〜…“麦わらのォルフィ”をさ〜〜…!!」
「“黄猿”だ!!」
自身の命が危険に晒されているのだと気付いた時、
「よしっ!!任せたぞ“馬の骨”共〜〜!!せいぜい、頑張りやがれ!!!」
バギーはポイッと三人を放り投げた。
「受け取れ!ジャンバール!!」
見事、三人を受け止めたジャンバールにベポは「よし!」とグーサインを出す。
「海へ潜るぞ!!!」
用は済んだ。とローは直ぐ様踵を返し、その場から逃げる指示を出す。
「シャボンディじゃあ…よくも逃げてくれたねェ〜…トラファルガー・ロー〜〜〜…!!」
黄猿の標的がルフィだけで無く、ローにまで及ぶ。
今にも攻撃が放たれると思われた時だった。
「そこまでだァア〜〜〜〜!!!!」
一人の海兵の叫び声が辺り一帯に響いた。
「もう、やめましょうよ!!!もう、これ以上戦うの!!!やめましょうよ!!命がも゛ったいだい!!!!」
戦う意志の無い海賊を追い、助かる命を見捨てる。
今戦い倒れていく海兵達は、命を捨てにいくバカじゃないか。と赤犬の前に立ちはだかり泣き叫んだ。
「…“数秒”…無駄にした。……正しくもない兵は海軍にゃいらん……!!!」
赤犬は目の前に立ちはだかる若い海兵を排除する為、マグマである己の拳を降り下ろした。
ただ、その拳は海兵に当たる事はなかった。
突如現れた赤い髪の男に防がれたからだ。
『あの人…』
どこかで見た事がある気がする。と海軍のやり取りを見ていた時だった。
「おい、クジラ。ソイツをこちらに渡せ」
恐ろしい声が掛かった。
『……ッ』
「………永久」
だけど、声音は凄く優しくて場違いだけど、泣いてしまいそうになる。
〔巫女様?〕
『…お願い』
あの潜水艦に。と願いを口にした。
その瞬間、クジラは海面から体を勢いよく出し永久を押し上げる。
「来い!!」
『うんッ!!!』
手を伸ばすローの手に掴まると、勢いよく引かれ甲板へと降り立つ。
そして、そのままグイッと引き寄せられる抱き締められる。
「行くぞ」
『ロー……私…』
「話は後だ。……全部、聞いてやる」
行くぞ。ともう一度言うと、船内へと促される。
『少し待って』
するりと、ローの手から離れようとした瞬間、パシッと慌てたように掴まれる。
「何処に行く」
『あの子にお礼を言うだけ。ローはルフィ達をお願い』
ギロッとクジラを睨み付けた後、早くしろ。と言い船内へ向かって行く。
その後ろ姿を見送った後、海へ振り返る。
『ここまで連れて来てくれてありがとう』
この場に連れて来てくれたクジラへ礼を言った。
クジラは礼に対して一鳴きすると、海へ帰って行く。
「永久も早く!!!」
『うん、今行くよ』
ベポの急かす声を聞きながらも、永久はもう一度海軍本部へ向き直り赤い髪の海賊を見た。
『(ありがとうございました)』
ペコリとその人に頭を下げると、急いで船内へ入る。
待ってましたと、ベポが慌てて扉を閉める。
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