海が導く

□act.92
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『い……イヤァアアアァッ!!!』


目の前で起きた現実に、永久は悲痛な叫び声を上げる。
貫いた腕がエースの体から抜かれる。


「エースがやられたァ〜〜〜!!!」
「赤犬を止めろォ〜〜〜!!!」


これ以上エースに近付かせない為に、白ひげ海賊団の皆が銃器を撃つ。
だが、全ては赤犬には効いてはおらず止まる気配はない。


「まだ、息はありそうじゃのう…」
『ッやめて!!!』


止めを刺そうと近付いてくる赤犬からエースを守る為、永久は無理矢理体を動かしエースの盾になる為間に入る。


「やめろォ〜〜!!!」
「これ以上は…!!!」


止めを刺そうとした赤犬の拳をジンベエは素手で受け止める。


「つまらん時間稼ぎはよせ、ジンベエ。元七武海だ、わしの力は充分に知っとろうが…」
「この身を削って…時間稼ぎになるなら結構!!!もとより、命などくれてやるハラじゃい!!!」


エースから赤犬を引き離す為、ジンベエと白ひげ海賊団の隊長が筆頭に赤犬へ攻撃を仕掛ける。


「永久!!エースがッ!!!」
『!!エースッ!!!!』


ルフィの叫び声に慌てて振り返る。
目に映るのは、ルフィに倒れ込んむ瀕死のエースの姿。


「……!!ごめんなァ………ルフィ…永久」


エースを支えるルフィの掌は、エースの血で赤く染まっていた。


『!!手当て…急いで、手当てを…!!』
「ちゃんと助けて貰えなくてよ………!!!すまなかった……!!!」
「何言ってんだ。バカな事言うな!!!誰か手当てしてくれ!!!エースを助けてくれェ!!!」


早く!!と叫ぶルフィの声に、白ひげ海賊団の船医が急いで駆け付ける。
だが、エースは無駄だと告げた。
内臓を焼かれ、もう助からないとエース自身が分かっていた。


「聞けよ、ルフィ…永久……!!!」
「何言ってんだ…エース、死ぬのか?……ぃ…約束したじゃねェかよ!!!お前絶対死なねェって…!!!言ったじゃねェかよォエースゥ〜〜!!!」
『ッ……』


エースとルフィ、二人の約束。
間に入る事が出来ない事ぐらい永久には分かっていた。
だからこそ、言葉が漏れてしまわないようにきつく唇を噛む。


「心残りは……一つある…。お前のーー
“夢の果て”を見れねェ事だ……だけどお前なら、必ずやれる……!!!オレの弟だ……!!!」
『…うぅッ…』


血が出てしまうのではと思う程唇を噛んでも、嗚咽が漏れてしまう。


「永久…オレはダメな弟だな……。こんなに、お前を泣かせちまってる…。絶対死なねェって…長生きするって……約束したのにな………破っちまって、悪いな……」
『……エー…ス!!』


初めて会った島でした約束。
覚えてくれていた事に、涙が止まらなくなった。


「……ハア…もう…大声も出ねェ…。……ルフィ、オレがこれから言う言葉を……お前、後からみんなに…伝えてくれ」
「………!?」
「………!!オヤジ………!!!みんな………!!!永久…そして、ルフィ……今日までこんなどうしようもねェオレを、鬼の血を引くこのオレを………!!」


「愛してくれて………ありがとう!!!」


まるで、時間がゆっくりと流れているかのように、エースの体が地に倒れようとしている。


『……ごめんなさい…ッ』


倒れるエースの体を寸前で抱き止めた。
ルフィが持っていたエースの命の紙・ビブルカードが速度をあげ、燃えていく。
この紙が燃え尽きてしまえば、エースは絶対に助からない。


「エー…ス……?」


ルフィの声が遠くに聞こえるようだ。
ごめんなさい、エース。
ごめんなさい、ルフィ。
ごめんなさい………。
たくさんの“ごめんなさい”を心に刻んだ後、あの島・シーアクアでミズキに言われた事を思い出す。



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