海が導く

□act.66
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「はじめまして、トラファルガー・ロー。僕は、雪城ユキ……永久の弟だ」


目の前に現れたのは、火拳のエースに瓜二つな男であった。


「どういう事だ。ユキ屋…お前は、死んだんじゃないのか」
「ああ、僕は既にこの世に居ない存在だ。だからこそ、試させてもらったんだ」


永久を幸せに出来る奴かどうかを。と、ユキは真っ直ぐローを見つめ言った。


「さっきも言ったが、結果は十二分だった」
「何が言いたいんだ、一体」
「永久は十分苦しんだ。もう、幸せになっていい筈だ。それを、僕は見届けたかった」


あんな別れ方をしたからな。
遠くを見つめるようにユキは悲しい表情で笑った。


「トラファルガー・ロー…一つ約束しろ」
「何だ」
「永久を一人にするな」


何があっても、離れるな。
真剣な眼差しでユキはローへ詰め寄る。


「約束するまでもねえ。当たり前だ」
「そうか…なら、良かった」


ニカッ、と心底安心したように笑っていた。
その瞬間、突然ユキの体が消え始めたのだ。


「ユキ屋!」
「ああ、気にするな。最後の未練がなくなっただけだ」


事も無げに言うユキに、ローはどういう意味だと聞くようにユキを睨み付ける。


「永久の笑顔と幸せの二つ…これが僕の未練だった。二つ共、お前のお陰で叶える事が出来た。ありがとうな、トラファルガー・ロー」


最後にお前に会えて良かったよ。と満足そうにユキは笑った。


「永久に会わなくていいのか」
「アイツの為にも僕の為にも、会わない方がいい。……永久をよろしくな」
「分かった」


満足そうな笑みを浮かべ、ユキは消えた。



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