海が導く

□act.58
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大変であった今日と言う昨日が過ぎ、明日と言う今日がやってきた。


「〈うわぁーん!永久ちゃん――!!…ぐずっ〉」
『ほらほら、泣かないの』


あれからの1日をローの部屋で過ごしていた永久がローと一緒に食堂に現れた途端、ユアが泣きながら抱き付いてきたのだ。


「〈ぐずっ…痛いとこない?〉」
『大丈夫だよ。ありがとう、ユア』


余っ程心配だったのだろう。
ユアは瞳に涙を浮かべたままであったが、安心したように笑った。


「ユア、一人か」
「〈ううん、ペンくんとシャチくんと一緒だよ!〉」


あっちに居るよ。と指差す場所は、


『キッチン?』


であった。
どうして二人はキッチンに?と不思議に思っていた時だった。


「「うわっ、アチチチチッ!!」」


大声を出し、二人はキッチンから出て来た。


「何してんだ、お前ら」
「「せ、船長!」」


驚く二人の着ているツナギはどういう事か、所々が焼け焦げていた。


『爆発でも起きたの?』
「「永久も!」」


ローだけでなく、永久にまで驚く二人に更に疑問が出て来る。


『キッチンで何してたの?』
「えっと、ほら…ペンギン言えよ」
「どうしてオレが…お前が言えよ、シャチ」


言い争いを始めた二人だが、このやり取りは長くなりそうだ。と思った永久は二人を余所にキッチンへと足を踏み入れた。


「「うわぁ!まだ、準備が途中!!」」
『これ』


そこで見たモノは、幾つかの料理であった。


「永久は昨日、色々あって疲れてるだろ」
「だから、シャチと話し合って作る事にしたんだが」


こんな不味そうな料理、食える筈無いよな。と二人は落ち込み出した。


『私、食べるよ』
「「は?」」
『一生懸命作ってくれた料理が不味い訳無いよ。私は、ペンギンとシャチが作ってくれた料理が食べたい』


私達の為に作ってくれたんだよね。と言って、永久は何時ものように笑った。


「ど、どうぞ」
『ありがとう。いただきます』


並べられた料理はどれも焦げていたり、盛り付けもぐちゃっとしていたり、と見た目は不味そうだった。
だけど、見た目では分からないのが料理の醍醐味というものである。


『うん、美味しいよ』
「本当のところは?」
『…少し、焼き過ぎかな。でも、不味くは無いよ』


二人の気持ちが入ってるからかな。何て言いながら永久は二人が作った料理をパクパク食べ進めていく。


『ごちそうさまでした』
「行くぞ」


永久が料理を食べ終わると共に、その隣でコーヒーを飲んでいたローは突然立ち上がり、永久の腕を掴んだかと思えばそのまま食堂から連れ出した。



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