月が導く
□act.26
1ページ/3ページ
あれからしばらく攻防戦は続いたが、ローさんに襲われるという事はなかった。
そして、朝起きると目の前にはローさんの寝顔。
こんな毎日に違和感を感じなくなってきたのは、感覚が麻痺してきたからなのだろうか。
『(それは女として失格な気がする)』
腰に回っている腕を退けようとするが、何時もの如く抱く力が更に強まるだけだった。
逃がさない。
そういう意志があるからなのだろう。
『朝ですよ、ローさん。起きましょう』
「………寝みぃ」
今日も変わらず、眠いらしい。
会った時よりも目の下の隈はましになってはいるが、消えないところを見ると、眠りが浅いのだろうか?
『起きないと、出掛けられないよ』
「どっか行く気なのか」
昨夜話した時、永久を襲った男が現れるかもしれないというのに。
『昨日言ったばかりでしょ?』
思い出を作ろうって、言った筈だけどなぁ。と永久は不思議そうにする。
「行くのか」
『行きますよ。怖いからって、引き籠っていても何も変わらないですし。ローさんと過ごせる日は、後少し何だから』
それとも、行きたくない?
不安気に、首を傾げる永久の姿にローは頭を抱えた。
「行きたくないとは、誰も言ってねえだろ」
惚れた弱みというものだろう。
しかし、昨夜の電話の件もある。警戒するに越した事はない筈だとローは考えていた。
『何処か行きたい所とかある?』
「いや」
無いという訳ではないだろう。
ただ、何があるかなどが分からないからだろう。
『なら、今日も私が行きたい所でいい?』
「ああ」
分からないなら、任せればいいのだ。
『水族館に行きたいんです』
昨日の海に引き続き、今日は水族館。
海関係の場所に行きたがる永久。
何か意味があるのだろうか。
.