月が導く

□act.26
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あれからしばらく攻防戦は続いたが、ローさんに襲われるという事はなかった。
そして、朝起きると目の前にはローさんの寝顔。
こんな毎日に違和感を感じなくなってきたのは、感覚が麻痺してきたからなのだろうか。


『(それは女として失格な気がする)』


腰に回っている腕を退けようとするが、何時もの如く抱く力が更に強まるだけだった。


逃がさない。


そういう意志があるからなのだろう。


『朝ですよ、ローさん。起きましょう』
「………寝みぃ」


今日も変わらず、眠いらしい。
会った時よりも目の下の隈はましになってはいるが、消えないところを見ると、眠りが浅いのだろうか?


『起きないと、出掛けられないよ』
「どっか行く気なのか」


昨夜話した時、永久を襲った男が現れるかもしれないというのに。


『昨日言ったばかりでしょ?』


思い出を作ろうって、言った筈だけどなぁ。と永久は不思議そうにする。


「行くのか」
『行きますよ。怖いからって、引き籠っていても何も変わらないですし。ローさんと過ごせる日は、後少し何だから』


それとも、行きたくない?
不安気に、首を傾げる永久の姿にローは頭を抱えた。


「行きたくないとは、誰も言ってねえだろ」


惚れた弱みというものだろう。
しかし、昨夜の電話の件もある。警戒するに越した事はない筈だとローは考えていた。


『何処か行きたい所とかある?』
「いや」


無いという訳ではないだろう。
ただ、何があるかなどが分からないからだろう。


『なら、今日も私が行きたい所でいい?』
「ああ」


分からないなら、任せればいいのだ。


『水族館に行きたいんです』


昨日の海に引き続き、今日は水族館。
海関係の場所に行きたがる永久。
何か意味があるのだろうか。



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