月が導く

□act.20
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バタァンッと勢い良く玄関のドアが開く音がしたと思えば、続いて部屋のドアが開き、


「久しぶり、永久!!」


と大声で沙知絵さんが部屋に入ってきた。
って、解説してる場合じゃなかった。
今現在の体勢、私は後ろからローさんに抱き締められている。


「あら、永久が男性に抱き締められている何て、珍しい。夢かしら」
「誰だ、この女」
『さ、沙知絵さん!!』


ビックリし過ぎて、抱き締めているローさんの腕を解く事を忘れて、沙知絵さんに抱き付こうとしていた。
が、ローさんの腕により阻まれてしまった。


『離して下さい』
「おい」
「永久ったら、見ないうちに綺麗になって。美形な彼氏まで作っちゃって」


叔母さん感激しちゃったわ。何て、ハンカチを取り出し涙を拭く真似をし出した。
止めて、今そんな事するの止めて!!


『ローさん、一度離して下さい。事情を説明したいので』


この体勢での説明はしたくない。と永久が強く言うと、舌打ちを一つした後、腕を離した。


『沙知絵さん、あのね…彼は彼氏じゃなくて…』
「赤飯炊かなくちゃ!お祝いよ!!」


何かスイッチが入っちゃってるみたいだから、しばらく沙知絵さんの事は様子を見よう。
先に、ローさんに説明しよう。
と振り返ると久しぶりに見るローさんの姿。
そうだ、私あれからずっと避けてたんだ。


『あの、えっと…』


どう話せばいいのか分からない。
こうなる事が分かってたから、出来る限り話し掛けなかったのに。


『ローさん…』
「オレは、お前を否定しない。言っただろ。全部、一緒に背負ってやる」


嬉しくて涙が出そうになる。
けど、涙は出なかった。


「ラブラブね、お二人さん」


空気の読めない人がいるからだ。


『沙知絵さん、取りあえず落ち着きましょう。流れを話しますから』


ローさんに説明するよりも、沙知絵さんへの説明の方を優先しないといけないようだ。
一つため息を吐き、取りあえずソファーに座る。



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