月が導く

□act.06
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意識が徐々に目覚めていく。
だけど、まだ眠い。


ふと、自分が暖かい何かに包まれている事に気付いた。
もっと、この温もりを感じていたい。
永久は心地好い温もりに、擦り寄る。
が、可笑しい事に気付く。


私は、昨日の記憶がない。
久しぶりのお酒を飲み、二杯目に手を出した事までは覚えている。
その後、私はどうやってベッドに入ったの?
そして、この温もりは?


「意外と、積極的だな」
『え?』


顔を上げれば、ニヤリと笑う彼の顔が目の前にあった。
何で、一緒に寝てるの。


『は、はなっ…離して!!』


気付けば、今自分が置かれている状態に恥ずかしくなる。
今私は、ローさんに抱き締められ寝ていた。


「オレはまだ眠いんだ。起こすとバラすぞ」
『なら、離して』


バラされたくはない。
だけど、一緒に眠る事はもっとしたくない。


「うるせぇ」


そう呟くと、更に抱き締められ、ローの胸へと顔を埋めてしまう。


「寝てろ」
『はあ、分かった』


今日は日曜で休みだし、寝てもいいか。
でも、この状態で寝れる訳がない。


『(やっぱり、無理!!)』


上を向けば、寝ているローさんの表情が窺える。


『(少し、このままでいよう)』


気持ち良さそうに寝ている人を起こす趣味はない。
しばらく見つめていたが、次第に瞼が再び重なり永久は眠ってしまう。


「やっと寝たか」


寝ている筈のローは、実は寝ておらず永久が寝るのをずっと待っていたのだ。
特別永久が眠るのを待つ意味はないのだが、何故かローにそうさせていた。


「本当に、無防備過ぎる奴」


自分らしくないな。
そう感じたローは永久を抱き締め直すと、今度こそ本当に眠りについた。



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