小説庫
□future panic!
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「伯父さんったら、ほんとに不精者なんだから・・・」
「ほんとだぜ。・・・つか、何で俺まで掃除しなきゃなんねーんだよ?」
「いいじゃない、手伝ってくれたって」
「ったく・・・」
敬太は、渋々ボロボロの物置のドアに手を掛けた。右手には箒、左手には塵取り。その上割烹着に姉さん被りのその姿は、クラスメイト達が見たら即爆笑されるだろうと思われるほど似合わない。キャンデがずっと後ろで笑いを堪えていることに気付いていたが、敬太はあえて突っ込まないようにしていた。臭いものには蓋の原理である。
「じゃ、開けるぞー」
「うん」
ガラガラッ
「ぶわっ汚ね!」
「すっごい埃・・・」
開けた瞬間に襲いかかってきた真っ白な煙のような埃。恐ろしい量のそれに入り口に立ち尽くす敬太を、キャンデは後ろからせっ突いた。
「頑張って、ケーちゃん!」
「って俺かよ! お前が行けよなキャンデ!」
「女の子にひどいことさせないでよ!」
「おわ、バカ押すな! ―――わっ!!」
滑るほど積もった埃に足を取られ、敬太は尻餅をついた。ぶわりと土臭い煙に巻かれる。これが雪ならばいいのに、と現実逃避をしながら呆然としていると、さすがに焦ったらしいキャンデが手を差し伸べて叫ぶ。
「け、ケーちゃんごめんなさい! 大丈夫!?」
「・・・キャンデ、てめぇ・・・。って、ん?」
「え?」
「なんか、床がチカチカして・・・」
違和感を覚えた敬太が、汚い床に顔を近づけた時のこと。不自然な機械声が、カウントダウンを始めた。
『移動、シマス。5、4、』
「!? ちょ、待てよ! 移動って何だ!?」
「ケーちゃん、早く捕まって!」
『3、2、』
「す、滑る・・・!」
『1、―――』
「ケーちゃん――――!!」
運動神経には自信のあるはずの敬太も、さすがに間に合わなかった。キャンデの腕に捕まろうととっさに足に力を入れた時点で、カウントダウンが終了する。目が眩んで立ちあがれなくなったところで、キャンデの叫びを余韻に、敬太の意識は飛んで行った・・・。