BL ss

□It will be what a tragic lines!
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「はい、御茶」
「はい、御菓子」
「はい、枕」
「…」



It will be what a tragic lines!




僕は、彼を物理的にも、精神的にも手に入れてしまった時から、彼の言う事だけは、静かに従って来て居た。
二つのファミリーが、一つに合体し、大きな組織と成り、其の頂点に立つ立場に有る僕が唯一、従う相手。
其れが彼だ。

「御苦労様」

偉そうなのは言葉だけで、手には手錠を掛け、片足には鎖を繋ぎ、重石を付けた。
物理的にも、精神的にも、支配はして遣った。ただ支配して居ないのは、言語だけ。下手な服従関係等つまらない。僕が傅いて遣った方が彼にはダメージが有るんじゃないか?僕の本能は当たりを出した。
彼は驚く程に衰退し、病んで行くでは無いか。
真っ暗なコンクリートで作られた部屋。天井等は見えなくて、頭上に広がるは闇。部屋の角に立つ、一本の蝋燭。何時も綺麗な白の質素なベッドと、机。
毎日、机にはバランスの採れた、高級な食事を並べ、間食には和菓子や、洋菓子を並べて遣る。
ベッドのシーツは毎日、洗い換えて遣り、僕が直々にベッドメイキングをして遣る。そして毎日、一体づつ人形を置いて帰るのだ。
此れは彼の『命令』なのだ。

『何時か咬み殺すから、僕を生き長らえる様にさせろ』

あの言葉を忘れない。しかし何時、思い出しても笑えてしまう。
荒んで行く彼が、何時か僕を『咬み殺す』のだろうか。何時か僕の身体から真っ赤な血が噴き出すのだろうか。

(有り得ない)

彼は荒んでしまったから。僕が幾ら『御世話』してあげても荒んで行くばかりだから。

「きょーチャン。何をして欲しい?」

僕は毎日、最後に聞く。何時か『もう殺してくれ』と、嘆かれるかを待ちながら。
彼は乾いた唇を、本の少しだけ開いた。

「……誰か、助けて…」


It will be what a tragic lines!
(なんて悲劇的なセリフだろう!)



さぁ、もっと壊れて、僕を楽しませてよ!




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