短篇小話 2


□幕間 〜神無村から 
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 そうそういつまでもお前たちの天下は続かない。こちとら、腕の立つ御仁らを七人も雇ったぞ。彼らの打ち出した作戦に従い、途轍もなく大きな弩(いしゆみ)や、それを模した張り子の覗く岩砦といった仕掛けを構築したり、周縁に切り立った断崖が巡っていることに甘んじず、逆に警戒しての堡を設けたりに勤しんで。そういった村の武装を隙なく固めるのと同時進行で、武装し戦い慣れしていろ相手へ怯まぬ心掛けを築くためにと、鋼をも貫くほど集中出来るまでを目標に、弓を引く習練を徹底してもおり。さあさ、いつやって来ても構わないぞ…と準備万端整って。緊迫ばかりが高まる中、野伏せりたちは予想以上の破格な数で押し寄せて来たものの。巨大な弩による先制攻撃とそれから、男衆らのほぼ全員でかかった、弓による一斉迎撃で浮足立たせたところへと引き続き。大胆不敵な作戦によって、頼もしき練達の刺客たちが敵陣への潜入攻撃を敢行。大きに暴れたその結果として、彼らの要塞こと“本陣”を2基とも、完膚無きまでという徹底さで陥落に追い込んで。後がなくなったことから破れかぶれになったとしか思えない、そんな残党らを迎え撃つこととなった最終決戦では。驟雨の降りしきる中、機巧により特化された野伏せりの大群と相対しても、微塵にも怯むことなく。容赦なく刀を振るっては、鋼の相手を片っ端からザクザクと切り刻んだ、それは頼もしき用心棒こと 七人の侍たちの獅子奮迅の働きは、神無村では後の世まで永く語り継がれた“英雄譚”にまでなったほど。

  ――― とはいえ。

 いつまでもそんな余燼に浸っている場合ではなくて。侍たちの到着を待ち、遅れに遅れていた稲刈りをとっとと済まさねばならないし、凄惨だった戦いの跡を感慨深げに眺めるよりも、焼けた家や崩れた石垣を手早く直して、元通りの“平穏な生活”をいち早く紡ぎ始めることが何よりも肝要。理不尽に課せられた無体へと、昂然と抵抗をして勝利を収めた事実は、誇らしげに飾っておいてもいいことなれど。地獄絵図のようだった戦いの方は、悪夢として早く忘れるに限るから。
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