■寵猫抄 2

□みゃあは ドレミのみゃ♪
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この夏といえば、
世界的に超有名な歌手、
キング・オブ・ポップス
衝撃の急死という大事件があって。
それでなくとも
久々のヨーロッパ公演ツアーや、
ご本人のお誕生日が間近だったので、
注目が集まってた最中の出来事であり。
世界中のファンがその死を悼み、
彼の出世作となった曲のPVが、
ニュースや
ワイドショーなどのあちこちで、
何度も何度も放送されていた。
今だと“ビデオクリップ”なんて
言い方もする“プロモーションビデオ”を、
ただ歌う姿を収めただけではなく、
特殊効果も駆使し、
ふんだんにダンスシーンも取り込んだ、
映画のようにストーリーのある
“作品”として、
画期的な作りにした、
その最初とも言えるのがその曲で。
なんてセンセーショナルなと、
話題になっての爆発的な大ヒットとなり、
曲を収めたアルバムは
ギネスブックに載っているほどの
売上を記録。
つい最近でも
“彼と言ったら…”との
引き合いに出される曲の、
筆頭であり続けたくらい。

その話題が何とか収まりつつある
秋の初めになればなったで、
今度は…今年は何かしらの記念の年なのか、
新時代のポップス界を
切り開いたとされる、
英国が生んだ
あの超有名な4人組ユニットに
関連した話題が、
これまた次々に取り上げられていて。
これまで出された
デジタル版ではどうしても、
限界があってか
再現されてはいなかった音質を。
今現在の技術を総動員して、
そりゃあクリアに、且つ、
臨場感あふるる出来へとなるよう、
収録し直したという
CDボックスが発売されるわ。
彼らと一緒に
ギターやドラムを演奏出来るという、
変わり種のゲームソフトが発売されるわ。

 「にゃにゃっ?」

基本的にお昼間はあんまり
テレビを観ないご家庭なのだが、
携帯やデジカメに収めた映像を
整理していたそのついで。
PCの画面じゃあ飽き足らず、
テレビに接続しての
大きな画面で眺めつつ、
ああこれは公園に行ったときのだねぇ、
こっちは城崎の旅行に行った折のだ、
覚えているかい?
あ、これは焼き増しして
キュウゾウくんにも
渡そうかしらね?なんて、
微妙にのんきな午後を過ごしていたのだが。
そんな映像たちが、
整理がついたとのことで
終しまいと消されたのと入れ替わり。
軽快なリズムを刻む曲をBGMに、
リアルタイムで放映されていたのだろ、
お昼のワイドショーか何かの画像が
ンパッと現れた。
聞き覚えのあり過ぎる
スタンダードな曲が流れて来たので、

 『ふぅ〜ん、
  そんなゲームが出るんだ』

番組自体からは
その程度の感慨を覚えただけで
済むはずだったものが、

 「♪♪♪〜♪」
 「? 久蔵?」

チャンネルを変えて、
ニュースでも見ておこうかなと
しかかった七郎次の手が止まる。
時折 画面を指差ししては、
仔猫の姿の自分や、
勘兵衛や平八が写っていたのへ、
何でどうしてと言いたげな
お声を出していたものが。
若しくは、
向こうのお国の
キュウゾウお兄さんのお顔へ、
とととっと歩み寄って、
触りに行ったりも
しかけていた仔猫の様子が…
ちとおかしい。
何に見とれているものか、
表情が止まっての陶然としており、
だがだが、

 「にゃんこや わんこは
  出てないよ?」

丁度、
ふわふかな毛並みの動物の映像に
示すような反応だけれど、
画面に写っているのは、
本物に似せたベースギターの
レプリカを構えていたり、
ゲームソフトの箱を提げて嬉しそうな、
アメリカの青少年の姿ばかり。
だっていうのに、
一体 何へと魂抜かれたか。
額にふわりとかぶさる、
軽やかな金の前髪越し、
紅の双眸うるるんと見開いたまま、
そんなテレビに見ほれてござる。
パッと見には、
テレビ前に置かれた
ローテーブルの縁へと、
手を載せての掴まり立ちという、
いつもの立ち姿にすぎないはずが。

 「…?」

ころころと丸い印象のする
三頭身の幼子、
まだあんよの殆どが露出している
半ズボン姿の、
その足元が…
微妙にゆさゆさと揺れてはいないか?
足元といっても、
足の部分はまだ覚束無いのか
動かせぬらしいが、
その代わりにか
お膝のところでリズムを取っての、
ふんふんルンルンという
一定のリズムで、
その小さな体が揺れており。
白っぽい柔らかそうな生地の
お洋服にくるまれた小さなお尻が、
よいよい・ひょいひょいと
微妙に上下しているものだから、

 「〜〜〜〜〜っ。////////」

 「心情の激動ぶりのほうは判ったから、
  久蔵の一体何に
  改めて惚れておるのか、
  話してはくれぬかの。」

今日も今日とて
執筆に入っておいでだったのを、
ちょいと息抜きと
通りすがられた勘兵衛様。
リビングに家人らを見かけ、
何をしているのかなぁと
そおっと歩み寄ったその途端、
こっちが突然掴みかかられての
驚かされようとは、
想いも拠らなかったに違いない。(まったくだ)






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