ワケあり Extra 2

□想定外の…2.14vv
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     序


今時とか全国的にどうなのかを
存じ上げないのですが、
私がその年頃だった、
昔むかしの大昔(笑)は、
近畿、大阪では、
丁度バレンタインデーの前後が
私立高校の入試日で、
その1カ月後のホワイトデー前後が
公立高校の入試日だったので。
中三の子らや、
好きな人が受験生だという
後輩さんたちにとっては、
何とも微妙な両日と
なったものですが。
ぴったりと
その日じゃあなくっても、
大体どこででも
その辺りといや、
高校・大学双方の受験に
重なりかねない頃合い。
受験生たちには、
落ち着いて集中出来るようにと、
授業や登校が
ほとんど免除状態に
なってたりする一方で、
迎える側の学校でも、
教室が試験会場になる関係から、
当日には
土曜や日曜が選ばれていても、
担当職員の方々の
打ち合わせなどの都合から、
その前後も
臨時休校とされる場合が多く。

 「ウチは持ち上がり組が
  大半だそうですが。」

付属の学校といや、
幼稚舎に始まり、
初等科に中等部に短大までと
取り揃えられている、
こちら様の女学園へ。
そう言うご当人だって
外部からの途中入学組の
ひなげしさんが、

 「それだからでしょうか、
  狭き門なんですってよ、
  此処の入試。」

外気のあまりの冷たさにだろ、
あっと言う間に
結露で曇った窓ガラスを、
小さな手のひらを当てて
拭いつつ。
他人事のように口にしたのへ、

 「ええっ?
  そうだったの?」

そんなの知らなかったと。
やはりこの高等部へと
外部入学して来たクチ、
今や 紛れもない
“マドンナ”の一角を担う
白百合さんが、
それは意外そうに口許を覆う。

 “まま、だからこそ
  退屈しなかろと
  思いもしたんですけれど。”

理系専攻、
退屈なハイスクールライフは
願い下げだと思ってた平八には、
なかなかに打ってつけの
歯ごたえだったらしいし、

 「神無中央高校。」
 「え?
  ええ、そうですよ。」

後ろの席から加わった、
こちらは持ち上がり組の
紅バラさんが口にしたのは、
随分と省略されていたが、
七郎次がここの他にもという、
滑り止めに受験していた
公立高校の名前。
そちらこそが本命だとして
頑張る子の方が多いほど、
結構 難関の秀才校で、
某T大への合格者も、
毎年のこととして
多数 輩出しておいで。
だって言うのに、
そんなことさえ知らなんだ、
草野さんチの七郎次お嬢様。
単なる内申評価から
そこが妥当だと
担任の先生から言われ、
それでと受験しただけの話で。
そっちへも余裕で
合格していたものの、
本命は
こちらの女学園だったのでと、
あっさり振ってしまった
豪傑だったりし。
そこまでの秀才には、
此処の入試なんて
ちょろいと言いたかった
久蔵さんもまた、
定期考査では
なかなかの席次を
保っておいで。
きっちりとした答えの出せる、
数学や物理が得意中の得意で、
それだけと教科を絞れば
トップが定席という
才女でもあり。

 『だってのに、
  何で古文がこれかなぁ。』

教科によっての
ばらつきがひどすぎる とは、
時々こっそり家庭教師もしてくれる、
某校医さんのお嘆き
…なのもさておいて。

 「それでって
  ワケでもありませんが、
  この3連休は
  構内全面立ち入り禁止と
  なってましたし、
  二月いっぱいは
  三年のお姉様がたへの
  バックアップ、
  全部の先生がたが
  “どんな質問へもお答えします”
  態勢が優先されるとか。」

それでのことか、
在校生の授業も、
短縮、いやさ
たった3時限だけの授業に
なってしまうこちら様。

 「お姉様がたは
  大変なんですから、
  手放しで喜んでちゃ
  いけないのでしょうが。」

それでもやっぱり
…あのねのねvv
いよいよの当日が、
だのに平日だった
のにもかかわらず、
そうまで自由時間を
長くもらえるなんてのは。
その学校に
生活時間を縛られている、
真面目でいい子の学生にとって、
有り難いこと
この上もなかったりし。

 「ヘイさんは
  お家へ帰るだけなの?」

 「はい?」

 「だから。
  お店が引けてから
  どっかへ出掛けるとか。」

 「う〜ん、
  どうでしょうねぇ。」

お持ち返りの甘味への予約も、
結構ありましたから。
それを受け取りに来る
お客様次第、
何にも予定は聞いてませんしと。
窓の桟の部分に後ろ手ついて、
さてねぇと
小首を傾げたひなげしさん、

 「久蔵も、
  せんせえの診療時間待ち
  なんでしょう?」

前後へ2つ並んだ格好の、
金髪頭の片やへと訊けば、

 「〜〜〜〜。///////」

 「はっきりしませんね、
  珍しい。」

 「…あ・まさか、
  せんせえがお出掛けするとか?」

往診の予定が入ってるとか?と、
七郎次が
ガバッと振り返って来て
訊いたのへは、

 「〜〜〜〜。(否、否、否)」

それはないないと大慌て、
両手を前へ突き出しながら
かぶりを振った久蔵であり。
そうそれならいんだけどと、
胸元押さえて吐息つく、
すっかり保護者の
白百合様だったれど。

 「間違いなく平日なのに、
  大人たちの予定って
  案外と
  判んないもんですよね。」

ウチの八百萬屋も榊医院も、
営業時間とか診療時間とかって
看板に出してるほどなのに、
それでも予断を許さないのが
当たり前なんですものねと。
肩を竦めて苦笑をし、

 「てなもんだから。
  あの勘兵衛殿の
  取っ捕まえられなさも、
  さほど特別なことじゃあ
  ないのかも知れませんね。」

 「いやいや、
  そんな極端なひとくくりをして
  どうしますか。」

選りにも選って、
当事者の七郎次が
とんでもないないと
かぶりを振った、
なかなかに
珍妙な会話を交わしてござった
彼女らだったのも、
今日は
特別な日だったからに他ならず。

 「まあともかく、
  どんな首尾となったかは
  明日報告し合うってことで。」

窓のお外は、
記録的寒波を
上書きしたいかのような、
勢いも強気な
雪催いの様相であるにも
かかわらず。
お元気な女子高生の、
白百合さんたちにおかれましては、
今日はいよいよの
大事な計画の実行日。
降雪なんぞに負けてたまるかとの
意気込みもありありと、
大きくしっかり頷き合って、
それじゃあと
帰宅の途についた
お昼前でございまし。
さぁて、
一体どんな2月14日と
なりますことなやら…。



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