ワケあり Extra 3

□屋根より高い…
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いやまあ、なんだ。
確か 昨年度の女王様は
右京寺様だったとか、
ふと思い出した方も
おいでではありましょうが、
そういう描写は
あんまりいじらずに
あっさりとスルーして
いただければ…。(苦笑)
で、今年はどういう
段取りになっておいでで?と、
新緑を眺めつつの
お茶会途中という
三華様がたにお聞きすれば、

 「私どもは
  裏方担当ですわvv」

 「……。(頷、頷)」

当日はもとより
前日にも準備に出向くが、
そちらは打ち合わせが主。
不慣れな初々しさも、
微笑ましいことよと
受け取られはするが、
だから…ということから
準備期間がない
ワケじゃあなくて。

 「難しいことへの
  挑戦ってのは
  やりませんものね。」

それこそ
文化祭じゃないのだから、と。
三木家専属
パティシエ様謹製の
カシスムースをひと匙、
白い指先にキラリと映える、
銀のフォークで
掬い上げた
白百合さんだったのへ、

 「久蔵殿は
  コーラスの伴奏担当ですし、
  シチさんは、
  野点のお手伝いも
  なさるとか。」

柔らかな印象のする
小さな手での
手振りも楽しげに、
すかさず畳み掛けたのが
ひなげしさん。途端に、

 「いやあの、
  それは…。///////」

何でここで
それを言いますかと、
端正な白皙のお顔を
戸惑いに赤く染め、
あたふたするところが
まだまだ可愛いvv
なんでも、
お母様譲りのお手前をと、
すぐ昨年 卒業なさった
お姉様がたから
名指しという
ご所望のお声が
かかったとかで。

 「お着物も着ての
  ことでしょう?」

 「いやいやそこは制服で。」

 「〜〜〜〜〜?
  (え〜〜〜?)」

 「何で久蔵殿が
  そこまで残念がりますか。//////」

いかにも残念そうに
眉尻を下げた紅ばら様の、
綿毛のような
金髪を揺らした涼しい風が、
スズカケの梢を
くすぐったそのまま
頭上へと抜けてゆき。
陽が差して来たせいだろう、
そちらの方向から
落ちた陰が、
少し濃くなっての
ひるがえったことで
“それ”へ気がついたのが
ひなげしさんで。

 「あれま…。」

意外なものが
宙を泳いでいるじゃあ
ないですかと、
柔らかそうな顎を上げ、
今日はいいお日和の
青空が広がっている
頭の上を
あらためて見やりつつ、

 「………久蔵殿、
  実は兄弟が
  おいでだったとか?」

 「〜〜〜〜。
  (否、否、否)」

単調なお声で訊かれたそれへ、
いやいやいやいやと、
髪を揺さぶって
かぶりを振った久蔵は、
確かに、
ここ三木家の
一人娘だったはずで。
親戚の従兄弟だの
若い叔父様だのも
同居はしていない。
だってのに、
黒の真鯉に緋鯉と
小型の子鯉まで、
五色の
吹き流し込みで揃った
こいのぼりが
空の高みで泳いでいる様は
間近から見ると
なかなか圧巻でもあって。

 「そういや、
  初節句のお祝いにって
  こいのぼりや
  五月人形が
  たくさん届いた話は
  聞いたけど。」

何しろ名前が名前だ、
待望の跡取り息子が
生まれたのだろうと
勘違いをされてのこと。
知らせを受けていた
知人の皆様から、
取引先の
担当者各位に至るまで、
桃の節句ではなく
端午の節句の方へ、
勇ましい武者人形を
どどんと
お届け下さったのだそうで。
お礼のお便りを出すついで、
確かに飾らせていただきました
という写真を撮った話も
一応は聞いたが…と
小首を傾げた平八だったのは。
それはあくまでも
過去のお話で、
今じゃあどこの関係筋だとて、
彼女の性別くらい
御存知だろうし。
こんなややこしいものを
わざわざ揚げては、
大きな勘違いを
なさった方々への
今更の念押し、
そんな間違いをしたこと
忘れてないぞという
誇示に見えるかも。
だとしたら、
余計な冷や汗
かかせるだけじゃ
ないのかしらんと
感じたからだが。

 「爺様が。」

訊かれた側は
落ち着いたもの、



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