短篇小話 3


□不思議なできごと
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 「冗談じゃないっ!」


 はっと目が覚めたら辺りが暗くてギョッとしたものの、
「…久蔵?」
 頬をくっつけていたほどの、すぐの間近からの声が立ち、それだけで…現状の全てが、五感へとなだれ込みながらの同時進行で、手際よく整理されてゆく対応力の柔軟さよ。
「…。」
「いかがした。」
 掻い込まれた懐ろの、精悍な匂いと温かさに、思わず安堵の吐息が零れる。雨も風もない晩だ、鎧戸を降ろすほどのこともなかろうと。そのままで寝入った枕元、床の間に切られた円窓の、障子戸が月光を吸って青く染まっている。真新しい畳の藺草の香りとそれから、話途中で先に寝付いてしまったらしいその肩に、掛けてもらったこの家の主人の羽織の残り香が、あんな珍妙な夢を、このうら若き剣豪に見させたということか。
「どうした? 何か言いながら目を覚ましたようだったが。」
「…。」
 覚えてる。冗談じゃないと、言った途端に目が覚めた。もがくように振り切るように、そこから逃げるようにして目覚めたほどもの、あんなはっきりとした夢を見たのは、生まれて初めてではなかろうか。
「正夢になってほしくなくば、誰ぞに話した方がいいと言うておったの?」
「………。」
「そうなっても構わぬ夢だったのか?」
 話してみよとの、勘兵衛からの促しの声へ、だが、

 「…。///////////」

 口を開けぬ久蔵であったのは。つらつらと語るには口下手だからとか、仕立て自体には惹かれるものがあったとか。そんな理由ではなく、もっと単純なこと。

 “…こんな恥ずかしい話が出来ようものかっ。/////////”

 そんな願望でもあるのかと思われるのも癪だし、そうと思ったそのまま、そんな願望があったのかと自分でも愕然としてしまい、
「…っ。/////////」
「久蔵?」
 どうしたとの案じの声へ、がばりと掛け布を頭からかぶり、そのまま衾の奥へもぐり込んでしまった若侍殿。

  「???」

 何が何やら判らないまま、それでも、まま、言及するほどのこともなしかと、衾の上から撫でてやる壮年様だったりし。



 もしも話が聞けたなら、どんなお顔をなさった勘兵衛様なのか。それはそれは見たくもあった筆者だったのは、ここだけの話である。(苦笑)






  〜 どっとはらい 〜


  07.4.21.



タイトルはユーミンの古いお歌からvv
いやもう、あちこちのお素敵サイト様で
“島田さんご一家”のパロディを拝読させていただいておりますので。
(勘9、勘7、7勘、いづれの傾向のサイト様にてもvv)
チビっ子キャラが出しゃばってるお話を、
別部屋でさんざん書き倒している実績を生かして手をつけてみたら、
案外と楽しくて困りものでした。(苦笑)
………でも、ワタクシ、
どんな作品でも まずは
おじ様(若しくは年長)キャラに走る人のはずなんですがね。(う〜ん)


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