ワケあり Extra 3

□どっちにしたって
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 「お式も厳粛で
  感動もの
  だったようだし、
  その後の披露宴も、
  父様の知り合いから
  警察関係の人たちまで
  そりゃあ たっくさん
  来てたはずなのに。
  起きてからはというと、
  征樹…
  佐伯さんのお顔さえ、
  出て来なかった
  ような気が。」

 「でも、
  披露宴の様子とかは
  覚えているのでしょう?」

手を握っていてくれた
だなんて言ってた
ほどだしと、
クラッシュアイスも
涼しげな、
カットグラスへと
そそがれたアイスティ。
マドラー代わりの
ストローで
くるんと掻き回しつつの
ひなげしさんからの
お言葉へ、

 「う…ん。それがね、
  何だか部分部分が
  不鮮明なんだな。」

 「え〜?」

 「あ、
  ヘイさんや久蔵殿が、
  おめでとうって
  拍手してくれたり
  司会とか進行とかまで
  やってくれたのは
  ちゃんと
  覚えてるんだよ?」

久蔵殿は
教会でエレクトーンを
弾いてもくれたし、と。
蕩けそうなお顔で
微笑みかければ、

 「……。(頷、頷)」

紅バラ様も幸せそうに
頬を染めてしまうところが
相変わらず。
まだ正式な
“夏休み”には
入ってない彼女らだが、
期末考査の採点のためという
名目での
休みに入っておいでの、
我らが三華様がたは
といえば。

 遠出には
 遅すぎるかもですが、
 夏の予定を
 立てましょうかと

何となれば
各々のコネや伝手が
半端ないお嬢様たちだもの、
ホテルや飛行機の予約が
間に合わなくとも
大丈夫と。
まだまだ梅雨のうち、
ちょっぴり湿気の多い空気が
むんと垂れ込める中、
草野さんチへ
お顔を揃えた3人娘。
リゾート地や
観光ツアーを案内する
ガイドブックや、
それぞれに可愛らしい
自分たちのスケジュール帳を
広げたものの、

 『…あのねあのね、
  実はねvv』

ローマだったか
ギリシャだったか、
白い建物が連なる
紺碧の海辺の写真を
眺めていた七郎次が、
一体何を思い出したか、
アイスティのストローを
よじよじと回し始めての、
唐突に
含羞み出したもんだから。
何だ何だと、
あとの二人が
それは素直に食いついた
結果、
引っ張り出されたのが、
冒頭からこっちの

  白百合様が
  寝苦しかった
  昨夜に見た夢、
  だったそうで。

しかも、
目覚める直前ほど
鮮明になるという
セオリー通り、
式も披露宴も終わりました、
明日にも
ハネムーンに発ちますよ
という二人っきりの宵の一幕が、
始まろうという正に
そのときに

  イオちゃんが
  ベッドへと
  飛び乗って
  来たもんだから

勘兵衛様が
何か言いかけてらしたのに。
えっ?と
頬染め聞き返しかかった
そのまんま、
自分のお部屋の
ベッドの上で
目が覚めたのだとか。

 「本当に不覚です」

白いこぶしを
握り締める七郎次の傍らで、

 「全くですわね。」

何故だか
ひなげしさんも
残念がっており。
……って、
なんであなたまでが。

 「え?
  だってシチさんたら
  披露宴のこと
  覚えてないなんて
  言うんですもの。」

きっと
私も久蔵殿と組んで、
たっぷり練習した余興を
ご披露したはずなのに。

 「シチさんが
  覚えてないということは、
  インパクトが
  イマイチ足りなかったからに
  違いない。」

 「………。(頷、頷)」

そそそ、そっちですか?
問題なのは。
片やは
さらっさらの赤い髪と
ふんわり柔らかな肌が
自慢の猫目の少女と、
もう片やは…
今日はちょっぴり膨らんだのが
不服そうな金の綿毛の少女と。
どちらも、
それは瑞々しい
水蜜桃のような
美少女二人だというに。
まるで真剣勝負に挑む
直前であるかの如く、
鋭利な太刀の
切っ先もかくやという、
研ぎ澄まされた表情になると、
互いの眼差しを
真摯に見据え合い、
きっと素晴らしいものを
完成させるのよ、
よろしくて?
ええ、それはもう…と
そりゃあくっきり
頷き合っていたり
するのだが。


  シチさんシチさん、
  そんなタイミングで
  目が覚めたのが
  残念だったのは、
  本当に、本っ当に、
  披露宴とか
  全然覚えてないから
  って…だけ、なんでしょうか?


  “え〜〜〜〜?
   何のお話か、
   おシチ判んない〜〜vv”
   (こらー)




   〜Fine〜  2012.07.12.





寝苦しい季節の到来です。
風がなくはないのですが、
一昨日の晩や昨夜は、
とにかく蒸し暑くって
たまりませんでしたので。
こういう脱線話を
ついつい思いついて
しまいました。
あんまり蒸し暑かったので、
白百合さんたら、
あのロン毛の警部補が
密着して来た夢を
見ちゃったんでしょうね。
ちょっと想像してみましょう。
……………う〜ん。
蒸し暑いようですよ、
今日も。(おいおい)


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