ワケあり Extra 3

□サマーエンド・イレギュラー
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何も
“九月に入ったら”
というのは、
節季の区切りでは
ないのだけれど。
それでも、
八月がこうまで押し迫ると、
ついのこととて、
ああ もう夏も終わるんだなぁ
という感慨になるのは、

 「皆さん、
  学生時代の夏休みが
  羨ましいから
  でしょうかねぇ。」

 「〜〜〜???」

 「うん、アタシも
  それは違うと思います。」

確かに
学生さんたちの
生活リズムってのは、
大人数が一斉に
同じ行動を取るせいか、
世相全体へも
結構大きな波及を
もたらしますけど。
羨ましいからってのは
どうだろか、と。
割と冷静な指摘、
今時の言いようで
“ツッコミ”を入れてから、

 「つか、ヘイさんたら
  どんどんと
  日本の方にこそ
  馴染み深い感覚に
  なってますよねぇ。」

 「あら、
  アメリカの学校だって、
  この時期は夏休みですよ?」

なぞと言いつつ、
子供のおもちゃのような
サイズながらも、
扇子じゃあなく
真ん丸な団扇を
ぱたた…と
懐ろ辺りで扇いでおいで
なのだから。
生まれも育ちも
米国の筈な
ひなげしさんだってのに、
日本通なところが
深まっているのは間違いない。

 「それにしても、
  いつまでも
  暑いですよねぇ。」

あと数日で九月だとはいえ、
昼間ひなかの蒸し暑さは
相変わらずで。
とはいえ、
だからって、
外出しない訳にも行かぬ。
いや、
学校はお休みなんですが。
アルバイトがあるって訳でも
ありませんが。
それでもそこはやっぱり、
好奇心が旺盛で、
フットワークが良すぎる、
十代というお年頃の、
為せる技というか、
性分・性質というものか。
ウチでゴロゴロ
してるだけじゃあ詰まらぬと、
ついつい
お出掛けに運んでしまう
お元気さよ。
勿論 無論、
身だしなみも怠りはなく。
汗の出方も
半端じゃあないため、
お化粧にもいろいろと
工夫と手間が要るが、
そこは まださほど
本格的にあれこれ塗りたくる
年齢じゃあなし、
すっぴんにも
自信ありというお嬢さんたち。
それでも
日焼け止めは基本だし、
汗のせいで匂うのは御免だと、
デオドラントにも気を遣う。
髪だって、
束ねなきゃ暑いけど
そうなるとクセがつくし、
帽子をかぶれば崩れるし…と、
悩みは尽きぬ中、
それでも頑張るのが
年頃の女の子。

 「汗とは
  微妙にズレますが、
  涼感ブラって
  知ってますか?」

相変わらずに大好きな、
某ビジュアル系
音楽ユニットさんたちの
新譜の話から、
流行の
ファスト・ファッションの
新しいショップの情報に
移った途端。
あっと
思い出したように
表情を撥ねさせ、
そんな話を持ち出したのが、
ひなげしさんこと平八で。

 「?」

キョトンとしている
紅ばらさんの細い肩に
片手をおいた、
金髪娘のもう片や、
白百合さんこと七郎次が、
淡いリップグロスで
つやつやに濡らした口許を
ほころばせる。

 「アタシ、
  知ってますよ。
  機能性下着みたいな
  素材で作ってあって、
  汗をかくほど
  涼しくなるんですってね。」

  さっすがヘイさん、
  素材工学にも
  明るいんですのね。

  というか、
  アンダーに汗をかくと
  えらいことになるもんで。

  ……巨乳だから。

  や…っ、あの、
  そおいうわけじゃあ/////

もうもうもうと、
恥ずかしがってる
ひなげしさんだが、
ふんわりと甘く香るのが
赤ちゃん用の
タルカムパウダーだ
というのは、
あとの二人のお友達も
とっくにご存知なこと。
日頃 お姉さんぶっているくせに、
もうもう可愛いったら
…とか感じたか。

 「………vvvv(喜、喜)」

めずらしくも紅ばらさんから
白い腕を延べ、
更紗のジレ越し、
ひなげしさんを
懐ろへと抱き込めば、

 「あ、久蔵殿、
  独占は無しでげすよvv」

 「こらこら、
  二人とも
  暑苦しくないの?///////」

きゃ〜ん、可愛いvvと、
瑞々しい風貌の
お嬢さんがたが、
話の弾みで
キャッキャと
抱き付き合ってたりする図は。
さすが
身だしなみの涼感効果の
恩恵か、
それとも、
柔らかそうで
すんなりした白い腕や、
マイクロミニの上をゆくほど
短くてドッキドキの
ホットパンツから
惜し気なく
あらわにされた
長い御々脚の眩しさからか。
見た目 まったく
暑苦しくないから
大したもので。
瑞々しくて香りも甘く、
きっと味わいだって
まろやかに違いない、
今どきが食べ頃の
水蜜桃のように、
愛らしくって
蠱惑に満ちたお嬢さんがた。
かてて加えて、
よくよく見やれば
半端ない
美貌風貌の持ち主と来て、

 “うあ、
  すげカワイイじゃんか。”

 “下手なアイドル霞むって。”

 “あんな子
  連れて歩きてーvv”

気を抜くと、
項垂れてしまいかかる
青少年たちのなけなしの精気を、
見やるだけで
難無く奮い立たせるなんて。
雑踏の中でも
一際目立ってしょうがない、
まさに
オアシスみたいな
彼女らだったが、

 「ああ、これこれ。
  そこなお嬢さんがた。」


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