砂 時 計
□碧色
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――白いカーテンの隙間からこぼれる淡い朝の薫りと鳥のさえずり。
僕は白いワイシャツとブレザーに袖を通す。着慣れた感触。でも…まどろんだ感覚から心を締め付けられるような感覚がする。
この部屋の外に僕が望むものなんて何もない。
でも、行かなきゃいけない。
それが……学校という檻。
「ふわぁあ〜…トイレっ…あ、お兄ちゃんだぁ。おはよお〜」
部屋を出ると、トイレの前で妹の愛花と鉢合わせする。妹はまだ幼い。寝起きでぐしゃぐしゃな髪から無垢な瞳が僕を見上げる。
「……。」
僕は何も言わずに愛花の脇を通り過ぎる。愛花は父親違いの妹だ。僕はいまだに……愛花を心のどこかで拒んでいる。
「お兄ちゃん、いってらっしゃい〜車にきをつけるんだよ?」
しかし愛花は無邪気にも僕に懐いて、声をかけてくる。だから完全に無視はできない。母は憎くても、生まれてきた愛花に罪はないからだ。
「……。うん。行ってくる」
僕が軽く頷くと、妹は笑みを浮かべて小さな手をいっぱいに振ってくる。
でも、僕はうまく笑えないまま――…まだ眠っている父と母を起こさないようそっと出ていく。
僕は高校生になってから、早い時間帯の電車に乗るために家族よりも早起きしている。電車で四十分はかかる遠距離だからだ。
だけどおかげで両親とはあまり顔を合わせずに済む。それに邪魔な僕がいなければ、一家団らんで楽しい朝食が摂れることだろう。