砂 時 計
□海沿いの町で
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高校では特に部活に入ることは強制されない。
おかげで僕は何処の部活にも委員会にも所属せずに済んだ。
授業さえ終われば僕は集団生活から開放される。
僕は学校が終わると大概、海岸沿いにある商店街をぶらぶらとしていた。
海辺の町であるだけに漁業が盛んで海産物を売っている店が多い。朝方は市場の卸売りで賑わっている。
この辺りは何処へ行ってもどこか生臭いような磯の香りが交じっている。
でも僕はこの海の香りがする町が嫌いじゃなかった。
僕が住む街並みは人が溢れかえっている。しかも街中は空気が濁っているし、煙草の匂いが充満している。それよりはいい。
そして僕はいつも商店街の隅っこにある小さな古本屋へと向かう。
本屋で時間を潰すのが僕は好きだ。
漫画でも小説でも本の世界にはまり込んでいる合間は現実から、目を背けることができる。
僕はその店で気に入った本を見つけると購入して学校の休み時間も暇を潰した。
それは退屈で億劫な日々のなかで、僕のささやかな楽しみでもあった。