ビター×スイート

□甘くない病。
1ページ/3ページ

 
 翌朝。俺は新作のレシピを試作する為に、父さんよりも早い時間に起きて厨房にいた。




――今は初夏。さくらんぼ、メロン、ブルーベリーなどといった旬のフルーツを使用したケーキが主になる。



タルトや生クリームを使用したケーキだけではなく、ゼリー等を使用した夏向けのメニューも勿論、思案してある。


完成させた試作品は大抵、冬麻か父さんに食べて貰う。


まず俺は自身で作ったケーキを少々味見してみる。うむ―…味に特に問題はない。分量を間違えたりはしていないからな。


しかし自分自身で食べてみるのと他人の味覚はおおいに異なっているものだ。…何故か。



誰もが『美味しい』と太鼓判を押し、また食べてみたいと思わせるようなスイーツを作るのは案外難しいものだ。



―…俺は常に、それを目指しているつもりなのだが。


他人の味覚というのは、時に俺の期待を大きく裏切るのである。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ