ビター×スイート
□甘くない夢。
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――お菓子の家に、本気で憧れたことがあった。
クッキーで作られた屋根にチョコレートの壁…子供の頃はお菓子の家に夢中でかぶり付く、ヘンゼルとグレーテルに誰もが憧れただろう。
まあ、それは卑劣な人食い魔女の罠でしかないんだけどな。甘いものほど罠がある。―…それは、あの童話に込められたテーマでもある。
それでも俺と冬麻(とうま)は幼い頃に絵本を開いては何度も、お菓子の家を眺めていた。
馬鹿のひとつ覚えのように絵本がぼろぼろになるまでな。
今考えると何故そんなに真剣だったのかは分からないけど。
ちなみに、冬麻というのは俺のひとつ下の弟だ。
まあ正しい関係は『義弟』であり、血縁関係上は『イトコ』にあたるのだが。
冬麻は気付けばずっと俺の隣にいる。もはや切っても離せない身体の一部のような存在だ。