先導者

□天下無双の君
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「ちょっと、ほんとに行くの……?」

「んだよー、言い出しっぺが怖くなったのか?」

「べ、別に!こんな時間に外出てもいいのかなって思っただけ!ニヤニヤするな!」

日付が変わるころ。

月と懐中電灯の明かりだけで暗い海岸を歩くのは、三和と***。
波が打ち寄せる音が心地よく響くが、心地よいのは耳だけだ。
顔を上げれば、周りは全て闇。かすかな月明かりが水平線まで照らしているが、何もないそれが逆に恐怖心を煽る。

事の発端は、数十分前。

てきぱきと風呂を済ませ、女子部屋で髪を乾かしていた***のもとを訪れたのはアイチたち中学生組。
幸い、まだエミとミサキは入浴中だったが、2人がいるときに女子部屋へ入ったりしたらどうなっていたことやら。***は密かに眉根を寄せた。

「明日も海でしょ?休まなくていいの?」

年上としての威厳を発揮したいところ。
***はぴしっと居住まいを正すと、3人を順々に指差しながら言った。

「せっかく長い時間***さんと一緒にいれるから……あ、あの、迷惑だったら戻ります」

そんな***を見て、どうやら自分たちの行いは良く思われていないらしいと思ったアイチが、弱々しい声を出す。不覚にもきゅんときた。
彼は本当に母性本能をくすぐることに関しては天性の才能を持っていると思う。

***はふぅと息をついて、口を開く。

「……別に迷惑とかじゃないわよ。でも、さすがにここじゃあミサキさんがうるさいから、別のところ行きましょ?」

そう言って歩き出した***たちのところへ通りがかったのが櫂と三和である。
今日のことなんかをのんびり喋っていた***たちに、三和が声をかけた。

「なんだー、こんなとこ来てまでお喋りか?」

どこか挑発じみた態度は一体何を煽っているのか。***がすっと前に出る。
アイチたちは後ろでオロオロとその様子を見つめていた。

「何よ、あんたたちだって喋ってるだけでしょ。入れてほしいんならどうぞ?」

「別にお喋りなら店でもできんだろ!せっかくだから、ここでしか出来ないようなことしよーぜって言ってんの!」

先程とは裏腹に、ニパッと微笑む三和。
それを見て、***もニヤリと口角を上げる。

「へぇ、たまには良いこと言うじゃない。だってさ、みんな、どう?」

言いつつ振り返ると、アイチは驚いた顔、森川と井崎は満面の笑みを見せていた。

「じゃーあ、やっぱり定番は肝試しよね!」
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