先導者
□涙と悲しみと
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君の時間はきっと、ご両親を失ってから止まってしまってる。
「俺には……これしかないんだ」
初めて見た君の笑顔は、とっても辛くて、痛くて、悲しかった。
「そんなことないよ」
私は知ってるよ。君がとってもかっこよくて、とっても優しいこと。
「カード以外にも、いっぱい持ってるんだよ。櫂くん」
今のアイチくんがいるのは、四年前の櫂くんのおかげだよ。
三和くんから聞いたよ。裏ファイト……って私にはよく分からないけど、三和くんのこと助けに行ったんでしょ。
それから、櫂くんはもう一回アイチくんを助けたんだよね。違うよ、あれは櫂くんのせいじゃないよ。
レンさんのこともそうだよ。櫂くんのせいじゃないよ。
それに櫂くんは知らないかもしれないけど、あの頃のレンさんは……ううん、やっぱりこれは今度話すね。
櫂くんはレンさんに、いっぱい元気と優しさをあげたんだよ。
ファイトしてるときの櫂くんは強くてかっこいいよ。
カードのことを考えてるときの櫂くんは、とっても優しい目をしてる。
それに、ほら、見て?
「櫂くんには、素敵な仲間がいっぱいいるでしょ?」
だから、一人だなんて決めつけないで、顔を上げて。
櫂くんのことを想ってる人は、たくさんいるよ。
ほら、まずは目の前の私に気付いてよ。
初めて見た君の泣き顔は、とっても綺麗で、全て吹っ切れたように爽やかだった。
涙と悲しみと
全て私が包み込んで溶かしてあげるから、もうちょっと頼って、ね。
end.