復活

□究極の選択。
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昼下がりの応接室。

カリカリとペンを走らせる音だけが響く、沈黙の時。

外は雨で、いつも鬱陶しいと思っていた生徒の声もない。

そんな心地良い時間を、彼は楽しんでいた。


溜まっていた書類を全て片付けて立ち上がると、ふと聞こえた足音。

てってってっ、と、それは確実に近づいてくる。

そして、ピタ…と止まったかと思うと、


「Trick or treatです、雲雀さんっ!!!」


バァァンッというドアの悲鳴と共に飛び込んできたのは、


「…魔女」

「That's right」

「ネイティブな発音だね」

「I study English,very hard」

「内容のレベルはかなり低いけど」

「仕方ないでしょう。馬鹿な管理人の知識では、これが限界ですから」

「そう」


再び沈黙が戻る。

しかし、魔女はその沈黙が気に入らないようで。

プクと頬を膨らませて、もう一度言う。


「…Trick or treat」

「お菓子くれなきゃイタズラする」

「Yes」

「言うと思ってたよ。はい」


ドアの前で立ち止まっていた魔女に手招きして、自分の方へ呼び寄せる。

その間にポケットから取り出した、一粒のキャンディー。

手の平に乗せれば、魔女は目を輝かせてこっちに来た。


「niceですよ、雲雀さん!雲雀さんもHelloweenというものが分かるんですね、意外です!」


了承なしにキャンディーを受け取れば、そのまま口に放り込み、


「では、次は草壁さんの所に行ってきますので!」


魔女は満面の笑みで言うと、ヒラリとマントを翻し、回れ右。

彼が持っていたとは思えないほど甘いキャンディーを口の中で転がしながら、足を進めようとした、その時。
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