復活

□モノジチ
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「危なっかしいのは、どっちだろうね」


私が目を開けたとき、視界は黒一色で、
そして私は身動きできないでいた。

無理やり顔を上げて見えたのは、同じクラスだっていうのに
滅多に顔を合わせることのない、風紀委員長さん。


「あ…えっと、雲雀…さん」


薄暗い階段でも確認できる整った顔。

その鋭い瞳は、しっかりと私を捉えていた。


「助けてくれて、ありがとうございます……も、もう放してくれても大丈夫です」


彼の腕は私の背中に回されたまま動かない。

足は地に着くか着かないかのところでフラフラと彷徨っている。


「あの……」

「――って言ったら、」

「へ……?」

「好きって言ったら、放してあげる」


何を言ってるんだ、この人は。

数えるほどしか会ったことない女子に、こういうこと言うかな。
ていうか、この人は何がしたいの?
私のこと好き…なわけないし。
新手のナンパ?女好き?


「なんでですか」

「好きだから」

「ふざけないでください」


彼の腕は力を抜くことさえなかった。
むしろ、きつくなっている気がする。


「あの……そろそろセクハラで通報しますよ」

「ワォ、命の恩人にそんなこと言うの?」


私はハァと溜息をついた。


「……どうしたらいいんですか……?」

「何度も言わせないでくれる?好きって言ったら、放してあげる」

「好きです、放してください」


なんという矛盾……ていうか棒読みすぎたかな……。

そっと顔を上げれば……
お、怒ってる!怒ってるよ!


「やっぱり放す気なくなった。とっととソレ置いて、応接室に来て」


彼は私の腕に数冊だけ残ったノートを指差して言い、私は地に足を着いた。


「いっ、嫌です……」


言い逃げるように去って行こうとする彼に精一杯の抵抗を見せれば、いつのまにやら。

私の首元にはヒヤリとしたトンファーの感覚が。


「……応接室で待ってるよ」


抵抗の甲斐なく、去って行く彼。

私は足元のノートを拾いながら、溜息をついた。

トントンと軽く揃えて、冊数を確認する。


「あれ……1冊足りない……」


キョロキョロと辺りを見渡してみるが、ない。


「……まさか……」



モノジチ


(しかも私のノート……)

end.
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