満月の夜に贈る歌
□知らなければ
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当時、僕は12歳。
母に愛人がいたことも知っていたけれど、母に溺愛していた父にそれを言うことができなかった。
母はイギリス貴族の血を引いている。
もちろん僕も。
母はいわゆるハーフだ。
父が過労で亡くなる直前に母は故郷のイギリスで、サーの称号をもつ男性と付き合っていた。
アンナニキタナイ
オンナノハラカラ
ボクハウマレタノ…?
僕はイギリス貴族の血を引く女が嫌いなのかもしれない。
蝶ヶ咲を抱かされてる時だって、嫌悪感と憎悪と失望…その他のどろどろした感情が混ざり合って、むしろ快感だったりする。
このまま堕ちるところまで堕ちてしまえば、楽かもしれない。
だけど、君に会ってから
僕は変わった。
いつかこの泥沼から、
本気で這い上がる気になっている。
歌月「こうもしていられないな。」
歌月は立ち上がり、学校へ行く準備を始めた。
冬木が迎えに上がった時は何事もないような、平静とした顔つきだった。
雨だけど今日も元気かな、沙羅。
後部座席で窓の外を眺める歌月と、複雑な表情を浮かべる冬木であった。