満月の夜に贈る歌

□踊れ、優しい娘よ!(上)
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沙羅と暁が廊下を歩いていると、向こうから

歌月と姫華がやってきた。





沙羅「あっ・・・」



沙羅は久々に一週間ぶりに会った歌月を見て立ち止まってしまった。







沙羅・・・




歌月も一瞬気まずいような顔をしたが、すぐに笑顔を作った。




歌月「やあ、校内で会うのも久々だね!


岩倉先輩と踊るのか、僕らも負けていられないね。」






ズキン―







何?

この胸の奥の痛みは・・・





沙羅は唇を噛み締めながら、無理やり笑顔を作って頷いた。



そんな沙羅を見て暁が口を開いた。



暁「まぁ、お前の教えもあって夏椿も上達が早くてな。

油断してるとお前もそろそろポッキリなんてな(笑)」



冗談交じりに言ってのける暁とそれに笑う歌月。





すると、姫華がクスッと笑って言った。




姫華「ふふっ、随分調子に乗ってくれるじゃない?


私たちは学園の『ゴールデンペア』と言われているのよ。
あなた達庶民に何ができるというの?

私たちは放課後も海外から先生を招いて何度も練習しているわ!」



姫華は暁に敵対心を露にした。


そして、沙羅の方を向く。





ビクンッ―





怖いよ・・・

綺麗な人なのに、眼差しが・・・怖い!








沙羅「あ、あの・・・」



沙羅がおどおどしていると、姫華が言った。




姫華「ふ〜ん。

あなたが 夏椿 沙羅?



蝶野君、こんな貧相な子のどこがいいの?」




歌月「おい!

やめないか!!」



歌月は姫華の発言を非難するが・・・





姫華「いいこと!

あなたが蝶野君に気にかけてもらえるのは、あなたが特待生で興味深いからってだけよ!

場違いだって何故気づかないの?

本当ならお父様の力を使って、退学にしたいぐらいよ。


退学になりたくなければ、今後一切、蝶野君に近づかないでちょうだい!」











退学・・・?


そんなの嫌!





でも、歌月といられないのも・・・










沙羅の頭の中は2つの選択肢が天秤にかけられ、ゆれていた。




しかし、そんな沙羅を余所に、この男が動き出した。
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