そこは調和の力が行き届いた森の中。偶然見つけたその場所に、沢山の魚が泳ぐ湖があった。
太陽の光を浴びて水面がキラキラと輝く。

「のっばらー見てこれ!でっかい魚獲ったっスー!獲ったどぉー!!」

湖の中から顔を出し、バシャバシャと水音を立てながら元気に魚を振りかざすティーダ。
魚も負け時となんとかティーダの手から逃れるべくビチビチ跳ねている。
フリオニールは元気に泳ぎ回るティーダみて笑いながら手を振った。ティーダの元気は見ているだけで、こちらも元気になって来る。
するとティーダは「一緒におよごー!」とフリオニールに大きく叫ぶ。
それに苦笑しつつフリオニールも叫ぶように答える。

「俺はいいよ!水に浸かり過ぎて風邪ひくなよ?!」
「ひかないッスよ風邪なんて!よーし、もっと獲るぞ…晩飯―!!」
「期待してるからな〜!」

ティーダは腰から下げていた網に魚を放りこむと、再び湖の中へ潜って行った。
今、フリオニールはティーダにセシル、それにクラウドと共に旅をしている。
今回の目的はカオス陣の動きを探ること。コスモスが用意してくれていた『家』と違い、食料は自力で取らないといけないし、風呂にも入れない。
本音を言えば湖に入りたい気持ちはあるが、今入ったら最後ティーダが飽きるまで出ることは出来ないだろう。そうなると夕飯は絶望的だ。

「もう一匹ゲットー!!」

目の前ではしゃぐティーダを眺めながらフリオニールはぼんやりと今日の夕飯はあのティーダが手に持つ魚だな、と思いメニューを考え始める。

焼き魚
煮魚
魚のムニエル

セシルとクラウドはあたりの見回りに行っているし、先ほどからティーダはずっとあんな調子だ。火の番をしているフリオニールは暇だった。
久しぶりののんびりとした時間。イミテーションも現れないだろうし、何より。

「ライトさんがいないの、なんだか久しぶりだな。」

口にしてから気付いて、バッと両手で口を塞ぐ。そうして辺りをきょろきょろと見回し、誰もいないことに気付いてハーッと息を吐く。

最近光の戦士。正式名を言うならばウォーリア・オブ・ライト。短くするならばライト。は、事あるごとにフリオニールの周囲に現れた。
しかも決まって「君に呼ばれた気がした」と言って、よくよく思い起こせば確かにフリオニールが「ライトさん」と口にした時に彼は現われるのだ。

「なんか口笛吹いて現れるチョコボみたいだな…」

そう思うと、なんだかちょっとだけ可愛らしく思えて来るかもしれない。
が、そんな考えが何時までも続くほど彼は可愛くはない。
むしろ最近は何だか凶暴化(?)しているようにも見える。
特に皇帝を見た時のあのバーサーっぷりは凄い。まるで親の仇を見つけたかのように剣を振りかざし、あのアイスブルーの瞳でシヴァも驚きの冷たさで睨みつけ、有無を言わせず
「走れ光よ!」と言って光を放つのだ。敵である皇帝でもちょっとだけ可哀そうに思えてきてしまう。
フリオニールが色々と思いだし思考の海に沈んでいると。

ヌルっ

「…ひッ‥わぁああああ?!」
「フリオニールってば百面相ッスね〜」
「ちょ、ティーダとれこれ気持ち悪ッ」
「えー頑張れって!」

何時の間に湖から上がって来たのか、ティーダはフリオニールの背後から服の中へと小魚を放りこみ、必死に取り出そうとするフリオニールを見てケラケラ笑った。

「てぃ、ティーダ!!」
「怒っちゃ駄目ッスよ!もう直ぐクラウドとセシルも帰ってくるし、ごはんごはん〜」

手に持った魚が沢山入った網をようやく小魚を捕まえたフリオニールに手渡し、ティーダは近くに干してあった布で体をふく。それと同時に草むらがガサガサと揺れとても笑顔なセシルと、反して何だかとても複雑そうなクラウドが現れた。

「お帰り二人とも。」
「ただいまフリオニール。今日の夕飯は何かな?」
「あれだ。」

フリオニールが指さしたのはティーダが獲って来た魚。

「あ、凄いねティーダ。これ全部獲ったの?」
「うっス!」
「今日のごはんはお魚料理が沢山だね、フリオニール?」

ニッコリ微笑むセシル。綺麗な、天使に見間違う笑顔だ。
だが、フリオニールはそんな笑顔よりも何よりも、彼の手に持つ槍が若干赤く染まっている所に視線が行ってしまった。
気付いたのかクラウドがセシルの肩をトントンっと叩き、首を横に振る。するとセシルが「ご飯前にごめんね」と言いながら武器を光の粒子へと変えその場から消す。

「ちょっと手強い敵と遭遇しちゃって。もう大丈夫だから。」
「そっか…」

色々と突っ込みたいところはあるがフリオニールはそれ以上気にしないことにした。
そうしてその日はティーダが獲って来てくれた魚をフリオニールが調理し、四人で仲良く食べた。
クラウドがずっと辺りを気にしていた。きっと仲間思いの彼は休憩中に敵が来ないか案じてくれていたのだろう。

だが、フリオニールは気付いていなかった。この時、裏で行われていた壮絶な戦いを。





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