短いお話。
□アカイセカイノハテ。
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「君のこと、嫌いだよ」
ああそう、とその聞き慣れた台詞に言い慣れた台詞を吐く。
「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い」
彼女は僕の隣で足をぶらぶらさせながら、延々と呪詛を呟く。
赤が、地面に広がっていく。
紅が、彼女を支配していく。
朱が、世界を侵食していく。
「だって、君は白いんだもの」
あたしと違って、白いんだもの。
血で汚れた髪をくしゃくしゃと撫でる。
ごめんね、僕は君と違って白いから。
「赤く染まってしまえばいいのに」
僕を染めてくれる赤など、この世界の何処にも存在しないから。
「紅く染まってしまえばいいのに」
僕を染めてくれる紅など、この世界の何処にも存在しないから。
「朱く染まってしまえばいいのに」
僕を染めてくれる朱など、この世界の何処にも存在しないから。
「あたしが、染めてあげようか?」
君には何もできないじゃないか。
「大丈夫だよ。私なら、君をまっかに染め上げられる」
そうだね、きみなら僕を変えられるかもしれないね。
世界を変えられなかった君と、
変えてしまったきみ。
アカイセカイノハテ。
(だから、あたしが私に変わるまで)
(君は大人しく白でいて)